米国最高裁判所は6月26日、共和党指名の6人の判事による6対3の多数決で、投票権法(VRA)の最後の実効的な保護条項を廃止する歴史的な判決を下した。この判決は、米国の最も重要な公民権法にとって致命的な打撃となるものだ。

ルイジアナ州の選挙区割りをめぐる判決

今回の判決は、ルイジアナ州の選挙区割りをめぐる「ルイジアナ州対カレー事件」に関するもので、同州が黒人有権者の選挙区を増やすために人種を考慮した選挙区割りを行ったことをめぐる訴訟だった。しかし、最高裁の多数意見を執筆したサミュエル・アリート判事は、ルイジアナ州に「黒人多数の選挙区を追加で創設する義務はなかった」と指摘。さらに、人種を理由とした選挙区割りは憲法違反であり、厳格な審査が必要だと主張した。

アリート判事の意見書は、1982年のVRA再承認を事実上否定する内容となった。これにより、選挙区割りが有色人種の選挙権を侵害していることを立証するためには、故意の人種差別の証拠が必要となり、その立証は極めて困難になった。さらに、アリート判事は新たな基準を提示し、州が黒人多数の選挙区を創設することも事実上不可能にした。

専門家からの批判

フロリダ大学の政治学者マイケル・マクドナルド氏は、「カレー判決は、人種コミュニティが一貫して特定の政党を支持している場合、その代表権を否定しても問題ないと最高裁が示したように見える」と指摘した。

リベラル派判事の反対意見

これに対し、エレナ・ケイガン判事は強力に反対意見を述べた。「最高裁は、議会が制定した偉大な法律を忠実に実施する義務を裏切った」とケイガン判事は述べた。さらに、「今回の判決により、少数者の選挙権が体系的に希薄化される可能性がある」と警告した。

「最高裁は今回の判決を、『技術的な調整』と表現しているが、実際にはVRA第2条を骨抜きにする内容だ。この判決により、州は少数者の選挙権を体系的に奪うことができるようになる。」
— エレナ・ケイガン判事(反対意見)

選挙への影響

VRA第2条は、有色人種が選挙プロセスに実質的に参加できる機会を保障する条項だったが、今回の判決によりその効力が大幅に弱められた。これにより、有色人種コミュニティと民主党候補者にとって大きな打撃となる可能性がある。

ただし、今回の判決が2026年の中間選挙に与える影響は限定的だと見られている。多くの南部諸州では候補者登録の締め切りが既に過ぎており、ノースカロライナ州、テキサス州、ミシシッピ州では既に予備選挙が実施済み。ルイジアナ州、アラバマ州、ジョージア州でも5月の予備選挙向けの投票用紙が既に郵送されているためだ。

しかし、監視団体「Issue One」は、今回の判決により共和党が2〜4議席を奪取する可能性があると分析している。特にフロリダ州やその周辺の南部諸州でその影響が顕著になると見られている。

今後の展望

長期的には、今回の判決が共和党の選挙区割り戦略を加速させる可能性が高い。これにより、今後の選挙において有色人種の選挙権がさらに脅かされる懸念が強まっている。