米国では梅毒感染者数が急増しており、2018年から2022年にかけて感染者数が80%増加したと米疾病対策センター(CDC)が報告している。そんな中、米テュレーン大学の研究チームが発表した新たな研究により、梅毒感染が脳卒中や心筋梗塞などの重篤な心血管疾患のリスク上昇と関連する可能性が示された。
研究では、2011年から15年間にわたり、ニューオーリンズの3つの病院の電子カルテを分析。梅毒感染者1,469人と非感染者7,345人を比較した結果、梅毒感染者は心血管疾患のリスクが大幅に上昇することが明らかになった。具体的には、大動脈瘤・解離のリスクが約2倍、虚血性脳卒中が53%増、出血性脳卒中が92%増、心筋梗塞が31%増、末梢動脈疾患が28%増であった。また、死亡リスクも大幅に上昇していた。
研究を主導したテュレーン大学医学部の医学生、エリ・ツァキリス氏は「梅毒が心血管系や神経系に深刻な影響を及ぼす可能性を示した数少ない現代の大規模研究の一つだ」と述べ、心血管疾患が米国の主要な死因であることを踏まえ、高リスク患者を治療する医療従事者はこの関連性を認識する必要があると指摘する。
梅毒感染と心血管疾患の関連性
梅毒はTreponema pallidumという細菌によって引き起こされる性感染症で、長期間放置すると心臓や血管に深刻なダメージを与える可能性がある。抗生物質による治療が有効だが、感染が長期化すると心血管系への影響が懸念される。
研究では、感染が1年以上続いた患者で特にリスクが高いことが判明。また、心不全や心房細動などのリスク上昇は確認されなかった。ただし、この研究は後ろ向き研究であり、因果関係を証明するものではない。
専門家の見解と今後の課題
テュレーン大学医学部循環器トランスレーショナル研究部長のアミタブ・C・パンディー氏は「感染症が心血管リスクにどのように影響するかを理解するための第一歩だ」と述べ、梅毒などの感染症が心血管リスクを高めるメカニズムの解明が今後の課題であると指摘する。
研究チームは、梅毒感染者に対する心血管疾患のスクリーニング強化や、長期的なフォローアップの重要性を訴えている。