反テロ政策の最前線に立つ「物議の人物」

セバスチャン・ゴルカ氏は、2022年に開催された「ロッド・オブ・アイアン・フリーダム・フェスティバル」で演説を行った。同イベントは、極右の銃規制支持者が集まる場として知られている。写真家マーク・ピーターソン氏/Redux

米ホワイトハウスの反テロ担当トップ、セバスチャン・ゴルカ氏は、トランプ政権で最も物議を醸す人物の一人だ。穏健な国家安全保障の世界にあって、ゴルカ氏はその過激な言動で際立っている。静粛な専門職の世界で、大声で気まぐれな彼の存在は異彩を放つ。

英国訛りの大きな声で、米国の作戦が「テロ容疑者を『レッドミスト(血の霧)に変える』」と語り、遺体を「薪のように積み上げる」と表現する。また、トランプ前大統領の発言「必ず見つけ出し、殺す」を引用した「WWFY WWKY」と書かれたラベルを首から下げている。

トランプ政権再登板後の混乱とゴルカ氏の存在感低下

2025年のトランプ大統領再登板後、米国は大規模な移民追放キャンペーンや連邦機関の大幅な予算削減に揺れた。こうした混乱の中で、ゴルカ氏の存在感は薄れていた。しかし、2月に米国とイスラエルによるイランへの攻撃が開始されると状況は一変した。イランによる報復攻撃のリスクが高まり、米国民や米国の利益が世界中で標的にされる可能性が浮上したのだ。

これを受け、ホワイトハウスの反テロ政策を誰が主導しているのかが再び注目を集めるようになった。編集部は「ゴルカ・ファイル」の公開に踏み切ることを決定。筆者は6か月間にわたり、ゴルカ氏の公の発言を追跡し、長年約束されながら未発表の国家反テロ戦略やアフリカ・中東での米軍の空爆に関する最新情報を収集した。

当初は古典的な取材活動の一環だった。筆者は反テロ政策を担当しており、ゴルカ氏は国家安全保障会議(NSC)の反テロ担当上級ディレクターだったからだ。その後、20人以上の現職・元職の安全保障関係者へのインタビューを交え、4月に発表されたプロパブリカの調査報道にまとめられた。同記事は、トランプ氏の移民政策への資源シフトに伴い、国家安全保障体制が空洞化した1年後の実態に迫る内容となっている。

取材への反応:Xでの激しい非難

プロパブリカはゴルカ氏に対し、複数の方法でコメントを求めた。しかし、同氏からの返答はなく、記事公開前にX(旧Twitter)で筆者に対し激しい非難を浴びせた。180万人のフォロワーに向け、「反米的」と糾弾し、「腐った記事」と断じたのだ。これにより、良識ある意見交換の機会は失われた。

編集部と協議の上、プロパブリカは記事内でこうした侮辱的な発言に言及することを決定した。これは、国家安全保障の重要な役職にトランプ氏が起用した「燃えやすい性格のリーダー」の一面を浮き彫りにするものとなった。元高官は「ゴルカらしい反応だ」と指摘した。

報道の透明性を示す動き

近年、ジャーナリストは自身の信頼性に対する攻撃に対し、「取材過程を示す」ことで反論する動きが広がっている。プロパブリカもその一環として、今回の記事を通じて、権力者の主張を事実確認するという基本的な取材活動が、いかに米国の反テロミッションの実態を浮き彫りにしたかを示したいと考えた。

筆者は9.11以降の反テロ体制を20年以上にわたり取材してきた経験から、ゴルカ氏の存在は馴染み深いものだった。しかし、その過激な発言と行動は、国家安全保障の世界において特異な存在だったのだ。

主な事実関係

  • ゴルカ氏はNSCの反テロ担当上級ディレクターを務める
  • 同氏の発言は「レッドミスト」や「遺体を薪のように」といった過激な表現が特徴
  • トランプ前大統領の発言「必ず見つけ出し、殺す」を引用したラベルを着用
  • 2025年のトランプ政権再登板後、移民政策への資源シフトで国家安全保障体制が空洞化
  • 2月に米国とイスラエルによるイラン攻撃が開始され、反テロ政策への関心が再燃
出典: ProPublica