米国の選挙人制度は、わずかに分断された数州に選挙結果を左右する特権を与えるという、奇妙なシステムとして200年以上にわたり定着してきた。しかし、この制度を廃止し、国民投票制へ移行するための長期的な取り組みが、過去20年にわたり民主党が主導する州を中心に着実に進められている。

2026年の中間選挙で民主党が巻き返せば、この動きは決定的な段階に達し、2028年の大統領選挙から選挙人制度が廃止される可能性が高まる。この動きを支えるのが、「全国民投票州際協定(National Popular Vote Interstate Compact)」と呼ばれる仕組みだ。

全国民投票州際協定とは

この協定は、憲法改正を経ることなく国民投票制を導入するための「奇策」とも言える仕組みだ。参加州は、自州の選挙人票を、米国全体の得票数で最も多かった候補者に割り当てることに同意する。ただし、参加州が合わせて270以上の選挙人票を確保し、その票が全国の得票数で決まる場合に限る。

選挙人票は全米で538票あり、過半数の270票を獲得すれば当選となる。そのため、270票以上を確保した州が全て協定に参加すれば、その候補者が270票を獲得したと見なされ、残りの州の選挙人票の行方にかかわらず当選が確定する。残りの州の選挙人票は、全国の得票数に影響を与えるものの、どの候補者が勝利するかはもはや重要ではなくなる。

協定の現状と今後の展望

これまでに、民主党が優勢な州を中心に、すでに222票分の選挙人票を獲得している。残る48票を獲得するためには、2026年の中間選挙で民主党がスイングステート(激戦州)の州議会と知事選挙で勝利し、「与党トライフェクタ(知事と両院の多数党)」を握る必要がある。

主なターゲット州は、ウィスコンシン、ミシガン、アリゾナ、ペンシルベニア、ネバダ、ニューハンプシャーの6州だ。これらの州で勝利すれば、選挙人票の過半数を獲得できる可能性が高まる。

なぜ今、選挙人制度廃止が現実味を帯びたのか

選挙人制度廃止に向けた動きが加速した背景には、制度そのものへの根強い不満がある。選挙人制度は、スイングステートの利害を優先するため、他州の有権者の票の価値が軽視されるという問題点が指摘されてきた。しかし近年、選挙人制度が党派的な対立の象徴となり、スイングステートの特権よりも、民主党支持層が圧倒的に支持する国民投票制の実現が優先されるようになってきた。

また、共和党が選挙人制度を維持したがる一方で、民主党は選挙人制度の廃止を公約に掲げる州が増え、選挙戦略の転換が進んでいる。これにより、選挙人制度の廃止が単なる理想ではなく、現実的な政策課題として浮上してきた。

課題と懸念点

しかし、この協定には法的・実務的・政治的な課題が残されている。まず、憲法改正を経ずに選挙人制度を廃止できるのかという法的な疑問がある。また、共和党が支配する州が協定に参加しない場合、選挙人票の配分に不均衡が生じる可能性がある。さらに、民主党が単独で協定を推進した場合、共和党からの反発が強まり、制度の安定性が損なわれるリスクも指摘されている。

それでも、選挙人制度廃止への機運は着実に高まっており、2026年の中間選挙がその行方を左右する重要な分岐点となるだろう。

出典: Vox