AI分野のスタートアップが企業市場の獲得を目指し、VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達競争を繰り広げている。そんな中、法律AIスタートアップ「Spellbook」の創業者兼CEO、Scott Stevenson氏は、多くの企業が実態よりも収益を水増しし、VCの注目を集めようとしていると指摘した。

Stevenson氏は4月17日、自身のX(旧Twitter)で、AIスタートアップ業界における「年間経常収益(ARR)」の不正な使い方を告発する投稿を行った。ARRは、サブスクリプション型の契約収益を年間ベースで見積もる指標だが、Stevenson氏によると、一部の企業が将来の不確実な収益をARRに含める「CARR(契約年間経常収益)」と混同させているという。

ARRとCARRの違いとは

ARRは、顧客から請求可能なサブスクリプション収益のみを対象とする指標である。例えば、1月に100万ドルの請求があれば、年間ARRは1200万ドルと見積もられる。一方、CARRは、長期契約における将来の収益も含む場合があり、医療AIやエネルギー最適化などの分野で使われることがある。

Stevenson氏によると、多くのAIスタートアップがCARRをARRと称して発表し、より大きな数字をアピールしているという。その結果、ARRとCARRの乖離が拡大しており、実態の3倍から5倍に膨れ上がっているケースもあるという。

具体的な水増し手法

  • 解約可能な契約を年間収益として計上:顧客が1ヶ月で解約できる契約にもかかわらず、年間収益として計上する。
  • 無料のパイロット期間を実収益として計上:3ヶ月の無料トライアルを3ヶ月の実収益としてカウントする。
  • 未完成機能の開発期間中の収益を計上:顧客が機能の完成後に支払う契約で、開発中の期間も収益として計上する。

Stevenson氏は、最近のポッドキャストに出演した際にも、アクセラレーター出身の初期段階のスタートアップが「100万ドルのARRを持っている」と主張しているが、実態は未だパイロット段階で、実収益に転換していないケースが多いと指摘した。

業界全体の問題に

Stevenson氏は、このような不正な指標の使い方が業界全体に広がり、VCやメディアをミスリードしていると批判する。特に、大手VCがこの手法を支持し、PR目的で報道機関に情報を提供している可能性もあるという。

「当初は、契約がまだ稼働していない段階で、少しでも評価を高めるために使われていたのかもしれない。しかし今では、ARRとCARRの乖離が拡大し、もはや詐欺と呼ばざるを得ない状況だ」
(Stevenson氏)

この問題は、AIスタートアップ業界全体の透明性と信頼性に関わる重大な課題であり、今後どのように対応が進められるのか注目される。