中国市場向けに開発されたBMWの新型EV「i3 Long Wheelbase」と「iX3 Long Wheelbase」が、ドアハンドルの安全設計を刷新した。欧米向けモデルで採用された退避式ハンドルに代わり、半埋め込み式の従来型ハンドルを採用。これは、中国における退避式ハンドルの安全性への懸念が高まったためだ。
中国では、衝突事故時に退避式ハンドルが引っ込んでしまい、乗員が脱出困難になるケースが報告されており、当局による厳しい規制が強化されている。テスラも米国で同様の問題を指摘され、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)がModel Yのドアハンドルに関する調査を開始する事態となっている。こうした背景から、BMWは中国市場向けに安全性を重視したハンドル設計を採用した。
中国市場向けに最適化された Neue Klasse アーキテクチャ
両モデルは、BMWの新世代EV専用プラットフォーム「Neue Klasse」をベースに、中国市場のニーズに合わせて開発された。特に、中国の顧客は後席の居住性を重視する傾向が強いため、ホイールベースが延長されている。
- iX3 Long Wheelbase:ホイールベースが108mm延長され、3,005mm(欧州版比+4.25インチ)に。X5と同等のサイズとなる。
- i3 Long Wheelbase:具体的な延長量は未公表だが、欧州版の2,898mm(114.1インチ)を上回る設計。
BMWは、ホイールベースの延長に伴い、車両のプロポーションを損なわないよう配慮したと説明。外観のバランスを保ちつつ、後席の快適性を向上させている。
中国独自のOSと運転支援システム
両モデルには、中国市場向けにカスタマイズされた「BMW Panoramic iDrive」と「OS X」が搭載される。主な特徴は以下の通り:
- ナビゲーション:アマップ(高徳地図)との提携により、中国国内のリアルタイム交通情報に対応。
- AIアシスタント:アリババとDeepSeekの技術を活用した音声認識・対話機能。
- HarmonyOS NEXT互換性:中国のデジタルエコシステムとのシームレスな連携を実現。
- 運転支援システム:中国の道路事情や交通パターンに最適化されたレベル2自動運転機能(都市部・高速道路・駐車場でのナビゲーション支援)。
これらのシステムは、中国のモビリティテック企業であるMomentaとの共同開発により実現した。
航続距離と充電性能 — 実用性を重視したスペック
BMWは、両モデルの航続距離について、中国のCLTC基準で以下の数値を発表:
- iX3 Long Wheelbase:900km以上(559マイル以上)
- i3 Long Wheelbase:1,000km以上(621マイル以上)
しかし、欧米市場向けの同モデルと比較すると、実際の航続距離は大幅に短くなる可能性が高い。例えば、欧米向けのiX3はEPA基準で約644km(400マイル)、i3は709km(440マイル)とされている。中国市場向けモデルは車両重量の増加やバッテリー容量の違いにより、実用的な航続距離は400km前後となる見込みだ。
充電性能については、800V高電圧システムを採用し、最大400kWのDC急速充電に対応。これは欧米市場向けモデルと同等だが、中国の競合他社であるBYDなどと比較すると、充電スピードで劣る点が課題となる。
安全性と快適性のバランスを追求
BMWは、中国市場向けEVの発売にあたり、安全性と快適性の両立を重視した。退避式ハンドルから半埋め込み式への変更は、中国当局の規制に対応するだけでなく、乗員の脱出性能を向上させる狙いがある。また、ホイールベースの延長や中国独自のOS・運転支援システムの導入により、中国の顧客ニーズに応える製品となっている。
今後、BMWはNeue Klasseプラットフォームを基盤とした他のモデルにも、こうした中国市場向けのカスタマイズを拡大していく見込みだ。