米国上院銀行委員会におけるCLARITY法案の審議が停滞し、トランプ前政権下で形成された親暗号資産政策の法制化が遅れている。同法案は暗号資産市場のルール整備を目的とする包括的な法案だが、DeFi(分散型金融)規定や管轄権、ステーブルコインの利回り規制を巡る議論が未解決のままとなっている。Galaxy Researchによると、今年の成立確率は50%を下回る見通しだ。

同法案はトークン分類、取引所・ブローカー登録、ソフトウェア除外規定、DeFi規定など多岐にわたる内容を含むが、特にステーブルコインの利回り規制が最大の焦点となっている。銀行業界は、ステーブルコインが銀行預金と競合するリスクを指摘し、その規模は最大6.6兆ドルに及ぶと主張。一方でホワイトハウス経済諮問委員会は、ステーブルコインの利回り禁止が銀行貸出を21億ドル増加させるとの見解を示した。

銀行業界の主張:6.6兆ドル規模の脅威

米国銀行協会(ABA)は、コミュニティ銀行向けの書簡で、ステーブルコインが銀行預金を奪うリスクを指摘。特に取引所や第三者が提供するキャッシュバックや紹介ボーナス、プロモーション利回りが銀行システムから資金を引き出す要因になると警告した。同協会は、最大6.6兆ドルの預金が影響を受ける可能性があると試算している。

一方で、スタンダードチャータードはより控えめな予測を示しており、2028年末までに最大5,000億ドルの預金がステーブルコインに流出すると見込む。特に地域銀行が最も大きな影響を受けるとされている。

ホワイトハウスの反論:システム全体への影響は限定的

米国商務省経済諮問委員会は4月に発表したレポートで、ステーブルコインの利回り禁止が銀行貸出を21億ドル(約0.02%)増加させる一方で、8億ドルのネット福祉コストを発生させると指摘。現在のステーブルコイン市場規模は3,200億ドルで、米国の商業銀行預金19.1兆ドルの約1.66%に相当する。

同委員会は、ステーブルコイン市場が5,000億ドルに拡大しても、その増加分が全て銀行預金から流出する場合でも、預金全体の0.96%にとどまると試算。システム全体の資金調達には大きな影響を与えず、コミュニティ銀行の価格設定力を試す程度にとどまると結論付けた。

CLARITY法案の行方と市場への影響

CLARITY法案が停滞し、規制当局のルール策定も進まない場合、ステーブルコインの利回り規制が宙に浮く状態が続く。この状況下で、取引所は未整備のまま利回り競争を続けることが可能となり、市場が自律的に答えを出す実験場となる可能性がある。

一方で、銀行業界は規制の空白が自らの競争力を脅かすと主張。ホワイトハウスは、規制が銀行システムの安定性を損なうリスクを指摘するなど、対立が続いている。