米国債を担保とするステーブルコインとの関係

米国債を裏付け資産とするステーブルコイン最大手のテザー(USDT)の米国債保管機関として、キャントル・フィッツジェラルドは暗号資産業界と深く結びついている。同社は2025年2月に最高裁判所が関税法(IEEPA)に基づくトランプ前大統領の関税が違法と判断した後、関税還付請求の取引市場が形成されたことを受け、注目を集めている。

CAPE還付ポータルの開始で加速する取引

米国税関・国境警備庁(CBP)は2025年4月9日、関税還付請求の電子申請ポータル「CAPE」を開始。これにより、56,497社の輸入業者が総額1,270億ドルの還付を申請した。政府は最終的に1,660億ドルの還付が見込まれると発表している。CBPは有効な請求に対しては60~90日以内に支払いを行うと発表しており、市場では還付請求権の取引が活発化している。

還付請求権の市場価格の変動

2025年7月にWIREDが報じたところによると、キャントル・フィッツジェラルドの関係者が輸入業者に対し、還付請求権を額面の20~30セントで買い取る提案を行っていたという。同社は「数億ドル規模の取引が可能」と主張し、すでに1,000万ドル相当の取引を実行したとされる。しかし、同社はこの報道を「完全に虚偽」と否定。セマフォーの2026年2月の報道でも、同社がこの商品を検討したが最終的に実行しなかったと伝えられている。

利益相反の疑惑と倫理問題

キャントル・フィッツジェラルドのCEO、ハワード・ルトニックは、トランプ前大統領が推進した関税政策を公然と支持していた一方で、同社の投資銀行部門が関税の違法性が判断された場合の利益獲得策を模索していたとされる。ルトニックは2025年5月16日付で、自身のキャントル株を成人した子供たちの信託に移管し、キャントル、BGC、ニューマークの経済的利益を放棄することに合意した。しかし、民主党議員らはこの措置が不十分だと主張。上院議員ロン・ワイデンとエリザベス・ウォーレンは2025年8月に、キャントルに対し、還付請求権の取引契約がどれだけ締結されたか、また同社または関連会社が取引の相手方であったかを明らかにするよう求めた。

市場価格の変動と今後の展望

還付請求権の市場価格は、2025年半ばには額面の20~30セントだったのに対し、2026年4月初旬には55~75セントまで上昇した。これはCAPEポータルの開始により、還付請求の実現可能性が高まったことが要因とみられる。一方で、ルトニックの倫理的責任を巡る議論は依然として続いている。

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