米ワシントン州シアトル郊外のボセルで、警察が売春容疑でマッサージ店5店舗を一斉摘発した。摘発はボセル市警察が「地域の懸念事項」を理由に実施したが、人権団体やマッサージ業者の支援団体は「アジア系女性や移民労働者への差別的な暴力」と非難している。
4月20日、キング郡刑務所前で行われた抗議集会で、マッサージ・パーラー・オーガナイジング・プロジェクト(MPOP)などの団体関係者は、警察の摘発が「性差別的で人種差別的な思い込みに基づくでっち上げ」だと糾弾した。集会を主催したMPOP、Whose Streets? Our Streets、Red Canary Song、International Migrants Allianceの関係者によると、摘発時の警察の対応は不当だったという。
「警察は自分たちの性差別的・人種差別的な思い込みを正当化するために摘発を行い、アジア系マッサージ業者がその代償を払わされている」
— リー・チェン(MPOP関係者)
集会で発言した組織者のJ.M.ウォン氏は、警察が摘発時に「身分を明かさず、通訳もなく、ミランダ権利も告知しなかった」と指摘。被害者が沈黙を保つ権利すら奪われた状況を訴えた。
わずか1人の逮捕、5店舗の閉鎖 — その実態とは
摘発対象となった5店舗のうち2店舗は、ボセル警察本部からわずか数メートルの場所にあった。そのうちの1店舗は、麗珍・ヤン(Lizhen Yang)氏が経営していた。ヤン氏と夫は容疑を否認しているが、4月14日に売春斡旋と人身売買容疑でキング郡刑務所に拘束された。しかし翌日には起訴されず、現在も事件は「終了」と記録されている。警察は5店舗すべてを「消火法違反」を理由に閉鎖したが、再開の見通しは立っていない。
MPOPによると、警察は摘発時に「防犯カメラを引き抜き、家具を倒し、ドアや看板、アート作品を破壊し、従業員から現金を押収した」という。従業員は職を失い、摘発が「労働者を救うどころか、さらに追い詰めるだけ」だとMPOPは批判する。警察は「被害者のトラウマ化、証拠品の押収、強制送還の脅威」を無視していると指摘した。
摘発は「監視型反人身売買」の一環 — 移民排斥の構造的問題
MPOPは、ボセルでの摘発が「監視型反人身売買(carceral anti-trafficking)」の典型例だと主張する。この手法では、実在するか想像上の搾取に対し、労働者や移民の権利ではなく「警察の暴力、労働者の排除、移民系ビジネスの閉鎖」で対応するという。こうした摘発は、国土安全保障省やICE(移民税関執行局)と連携して行われることも多い。
同団体は、10年以上前にも同様の摘発が行われていたと指摘。当時の摘発は「国際的な売春組織の摘発」として発表されたが、実態は移民系マッサージ店への差別的な取り締まりだったと振り返る。