米国で発売されたジープ初の電気自動車(EV)であるワゴニアSが、発売直後から深刻な販売不振に陥っている。そんな中、わずか91マイル(147km)しか走行していない中古車が、オークションで驚くべき価格で落札された。
米中古車オークション「Bring a Trailer」で落札されたワゴニアS Limited 4xeは、38,500ドルで取引された。これは新車時の定価(67,195ドル)から約3万ドルも値下がりした金額で、EV市場における価格下落の厳しさを浮き彫りにしている。
500馬力のEVがなぜこれほど安くなったのか
ワゴニアSは、デュアルモーター、四輪駆動、500馬力(507PS)、524 lb-ft(710Nm)のトルクを誇るフルサイズEVだ。航続距離は100kWhバッテリーで294マイル(473km)と控えめながら、広い室内空間と充実した装備を備えている。例えば、この落札車両はホワイトカラーの「Dark Appearance Package」仕様で、パノラマルーフ、加熱シート、加熱ステアリングホイール、サラウンドビュー・カメラ、アダプティブ・クルーズコントロール、ワイヤレススマートフォンミラーリング、12.3インチタッチスクリーン、アルパイン製9スピーカー・オーディオシステムなどを装備していた。
それでも、新車時の定価67,195ドルから3万ドル以上安い38,500ドルという価格は、EV市場の現状を象徴している。特に、発売直後から販売が低迷していたワゴニアSにとって、この価格は「格安」と言えるレベルだ。
市場の冷え込みと税制優遇の打ち切りが直撃
ワゴニアSの販売不振の最大の要因は、米国連邦EV税額控除の打ち切りだ。2023年9月に7,500ドルの税額控除が終了したことで、ワゴニアSの販売台数は激減した。税額控除があった2023年の第1〜3四半期には1万台以上を販売していたが、控除終了後の2四半期ではわずか613台にとどまった。
ジープの親会社であるステランティスは、この状況を受けて2026年モデルの生産を中止し、代わりに2027年モデルでバッテリー性能、ソフトウェア、機能、内装品質の向上を図ることを決定した。また、2027年モデルでは、テスラのスーパーチャージャー網へのアクセスを容易にするNACS充電ポートが標準装備される予定だ。
「格安」で手に入る500馬力のEV
この落札車両を購入した人物は、わずか91マイルしか走行していない500馬力のEVを、新車時の半額以下で手に入れたことになる。しかし、その一方で、ワゴニアSはモデルチェンジを控えており、リセールバリューの不確実性も抱えている。それでも、38,500ドルという価格は、多くの装備を備えた「ほとんど新品同然」のEVを手に入れる絶好のチャンスと言えるだろう。
ジープにとっては残念な結果だが、この落札者にとってはまさに「 bargain-hunter gold(掘り出し物)」となったようだ。