Netflixの人気シリーズ「ストレンジャー・シングス」の新たなスピンオフ作品「ストレンジャー・シングス:テールズ・フロム’85」が、シリーズの原点回帰ともいえる冒険の精神を蘇らせている。シリーズ本編で成長したマイク、ウィル、ルーカス、ダスティン、イレブン、サムたちは、今作で再び子ども時代に戻り、セルシェーディングの鮮やかなアニメーションで描かれる。
シリーズ本編の最終シーズンで、ジョイスがヴェクナとの戦いのフラッシュバックを通じて示したように、彼らは原始の悪との戦いで多くを失った。その中でも最も大きなものは、純粋な子ども時代の記憶だった。しかし、そんな彼らが再び自宅から飛び出し、雪の中を自転車で学校へ向かうシーンで幕を開ける本作は、そんな失われた innocence を取り戻したかのようなエネルギーに満ちている。
本作は、シリーズ本編のシーズン2とシーズン3の間に位置する物語で、ウィルがアップサイドダウンに囚われ、イレブンがその扉を閉じた直後から始まる。しかし、物語の主人公たちは、その時点では「最悪の事態はすでに過ぎ去った」と感じている。そんな彼らが新たな冒険に挑む姿は、シリーズファンにとって懐かしさと新鮮さを同時に感じさせる。
アニメーションが解決した成長のジレンマ
「ストレンジャー・シングス」は、5シーズンで42話という長編にわたる物語を9年かけて制作したが、その間に子役たちは成長し、シリーズ本編では成人俳優が若い役を演じるという状況が生まれていた。20代の俳優が10代の役を演じる80年代オマージュ作品は珍しくないが、本作では子役時代から共に歩んできた俳優たちが、今や親の世代となっていたため、リアリティを保つのが難しくなっていた。
しかし、アニメーションという手法により、ダスティンは歯が生えそろっていてもシーズン1の愛らしい子ども時代の面影を残し、イレブンも母親でありながら子ども時代の面影を色濃く残すことが可能になった。これにより、観客は成長した俳優たちの演技に違和感を覚えることなく、純粋な子ども時代の姿を思い出すことができる。
新たな声優陣と独自の世界観
ただし、本作ではオリジナルキャストが声優として復帰していないため、見慣れた顔に聞き慣れない声が当てられている。そのため、当初は違和感を覚えるかもしれないが、徐々にその違和感は薄れていく。例えば、ルーカス・ディアスはシーズン2のマイク役・フィン・ウルフハードよりも声が少し低めで、ジョリー・ホアン=ラパポートはサディー・シンクが演じたマックスよりも感情表現が豊かだ。その一方で、ブレット・ギプソンが演じるダスティンは、デヴィッド・ Harbourが演じた原作の愛らしいキャラクターとは異なり、やや generic な印象を与えるという声もある。
しかし、こうした違和感はむしろ、本作が「ストレンジャー・シングス」のアニメーションスピンオフであることを強調する要素となっている。かつての実写映画のアニメーション版、例えば「ゴーストバスターズ(The Real Ghostbusters)」や「ゴジラ ザ・シリーズ(Godzilla: The Series)」のように、原作の世界観を踏襲しつつも、独自の解釈で描かれる本作のスタイルは、シリーズファンに新たな楽しみ方を提供している。
暴力や過激な表現を抑えた、純粋な冒険譚
また、本作はシリーズ本編に比べて暴力や過激な表現を抑え、子どもたちの新たな冒険を描くことに重点を置いている。シリーズ本編の第一話のオープニングで示されたように、何らかの汚染された胞子が物語の鍵を握る可能性が示唆されているが、その展開はシリーズ本編とは異なり、より軽快で冒険色の強い内容となっている。
「ストレンジャー・シングス:テールズ・フロム’85」は、シリーズ本編で失われた子ども時代の純粋さと冒険心を取り戻し、新たなファン層にもアピールする作品となっている。セルシェーディングの鮮やかなビジュアルと、子どもたちの成長を描くストーリーは、シリーズの原点回帰ともいえる作品となっている。