トランプブランドのAIデータセンター、CEO辞任で計画頓挫の危機
テキサス州パンハンドルで計画されていた「フェルミ・アメリカ」プロジェクトは、AIインフラの巨大プロジェクトとして注目を集めていたが、CEOの退任とともに深刻な停滞に陥っている。同社の株式は、過去6ヶ月で75%下落した後も下落を続け、投資家の不安が高まっている。
CEO退任が浮き彫りにしたプロジェクトの課題
同社のCEO、トビー・ノイゲバウアー氏が突如として退任を発表した。同氏は木曜日、Axiosの取材に対し、プロジェクトの困難さを認めつつも、退任の意図はなかったと述べた。特に、AIチップの冷却システムに関するサプライチェーンの見通しの甘さを認め、「供給網の状況を誤解していたかもしれない」と謝罪した。
「冷却システムの確保が当初の想定よりもはるかに困難だった。これはプロジェクトのボトルネックとなっている」
— トビー・ノイゲバウアー氏(元CEO)
同社に対する追加のコメント要請は、土曜日にもかかわらず返答がなかった。
「テナント不在」が最大の障害に
プロジェクトの最大の課題は、「アンカーテナント(大手顧客)」の不在だ。AIデータセンターにとって、テナントの存在は冷却システムを含むインフラ整備の前提条件となる。ノイゲバウアー氏は取材に対し、テナントがなければプロジェクトは進まないと述べたが、一方で「テナント不在は問題ではない」とも発言。矛盾した見解が浮き彫りとなった。
3月30日の決算電話会議では、アナリストからテナントの有無について厳しい質問が相次いだ。ノイゲバウアー氏は「現在、新たな意向書に署名中だが、正式発表までは公表できない」と回答した。また、昨年12月にはテナントが撤退し、これに関連して投資家から集団訴訟が起こされていることも明らかになった。
「プロジェクト・マタドール」の現状と将来性
同プロジェクトは、2025年6月に発表され、その後すぐに上場を果たした。正式名称は「ドナルド・トランプ先進エネルギー・知能キャンパス」で、テキサス州パンハンドルに建設予定の敷地面積はマンハッタンの半分に相当し、ニューヨーク市の3倍の電力需要が見込まれている。
同社は今年、航空許可を取得するなど一定の前進は見せたものの、17ギガワットの電力供給計画(天然ガス、原子力、太陽光を含む)の実現には、依然として多くのハードルが残されている。
冷却システムの遅れが計画全体を阻む
ノイゲバウアー氏は、冷却システムの確保が当初の想定よりも困難であることを認めた。通常、冷却システムはテナント側で設計されるため、テナントの確保が前提となる。同氏は「これは我々が当初想定していた以上のボトルネックだ」と述べた。
独立系市場調査会社クリーンビューのレポートや、決算発表、公的書類、経営陣の発言などからも、プロジェクトが直面する課題が浮き彫りとなっている。クリーンビューは、クリーンエネルギーとデータセンター市場を追跡する企業だ。
トランプ元大統領の関与と今後の展望
同プロジェクトは、元エネルギー長官リック・ペリー氏が共同設立者の一人であり、トランプ前大統領の支持者が後押しする形で進められてきた。巨大AIインフラプロジェクトが、その規模と野心にもかかわらず、実現に向けた道のりでつまずいていることが明らかになった。
今後、テナントの確保や冷却システムの整備が進まなければ、プロジェクトは頓挫する可能性が高い。投資家や関係者の間では、同プロジェクトがAI時代のインフラ整備の成功例となるのか、それとも失敗例となるのか、注目が集まっている。