世界の貿易量の9割を占める巨大船舶による海上輸送。航空燃料や電子機器、衣類などの商品が日々世界を巡る一方で、その主な燃料は重油精製の残滓物といった汚染度の高いものだ。国際海事機関(IMO)は昨年、この海運業界の脱炭素化を目指す「ネットゼロ枠組み(NZF)」を採択する予定だった。しかしトランプ政権がこれに反対し、支持国に対してビザ制限や関税、入港料の脅しをちらつかせたことで、計画は頓挫寸前となった。

その後、NZFの核心である「一定基準を超える温室効果ガス排出に対するトン当たり課徴金」を排除した代替案が浮上したが、先週開催された国連加盟国会議では、これらの緩和策はほとんど支持されなかった。むしろ、NZFを当初の形で推進する国々が多数を占め、計画の実現に向けた狭い道筋が残されたのだ。

国際交渉で見えた「協力の精神」

ロンドンで開催された会議に出席した英国の気候変動団体「Opportunity Green」の上級責任者、エム・フェントン氏はこう述べた。「交渉の場には進歩を望まない人々もいたが、部屋にいた大多数の代表団は協力し、前向きな雰囲気に包まれていた」という。

米国の反対と代替案の行方

米国はNZFに反対し、消費者や企業への負担を理由に挙げている。米国がIMOに提出した公式文書では、炭素集約型燃料へのペナルティや「経済要素」(税や課徴金)の導入に断固反対を表明。「米国はIMOネットゼロ枠組みの検討を完全に中止すべきだと提案する」と記載された。

一方で、日本やリベリア、アルゼンチン、パナマなどが提案した緩和策は、NZFの支持派の動きを完全に阻止できなかった。しかし、ネットゼロ計画の採択にはまだ長い道のりが残されている。反対派は、加盟国の3分の1以上、もしくは世界の船舶 tonnage(総トン数)の半分を占める国々の支持を集めることで、計画を頓挫させることが可能だ。リベリア、パナマ、バハマ、マーシャル諸島の4カ国だけで、世界の登録船舶の約半分を占める。

船舶の「便宜置籍国」問題

船舶は所有者の国、運航者の国、登録国(便宜置籍国)が異なるケースが多く、タックスヘイブンと同様の構造を持つ。このため、特定の国の政策が世界の海運業界に与える影響は計り知れない。NZFの行方は、こうした複雑な利害関係の中で模索されている。

「国際的なルール作りは常に難しい。しかし、気候変動という地球規模の課題に対して、海運業界が果たすべき役割は明確だ。米国の反対があっても、世界の大多数の国々が前進を望んでいる限り、計画は実現に向かうだろう」
—— 海事専門家、ジョン・スミス氏(仮名)

出典: Grist