ニュージャージー州が電力規制改革で先陣を切る
米国最大級の電力市場であるニュージャージー州で、電力インフラの計画と資金調達の仕組みを根本から見直す動きが加速している。同州は6500万人以上の電力利用者に影響を与える可能性のある規制改革に取り組み始めた。
州知事の公約が契機に
ニュージャージー州のミッキー・シェリル知事は2025年の選挙戦で電力料金の引き下げを公約に掲げ、当選後すぐに実行に移した。直近4年間で同州の電力料金は48%上昇し、平均月額電気代は83ドルから130ドルにまで跳ね上がった。就任初日に知事は2つの行政命令を発令し、電力料金の凍結に向けた資金確保と、新規発電所建設の障壁緩和を目的とした非常事態宣言を発表した。
このうち最初の命令には、州規制当局による電力会社の事業モデル見直しも含まれていた。この見直しの具体的な内容が明らかになりつつある。
規制当局が100年続く事業モデルの抜本的見直しを発表
ニュージャージー州公益事業委員会(NJBPU)は11月、ニュージャージー州の100年続く電力会社事業モデルの見直しに着手すると発表した。このモデルは、電力配電会社(EDC)に対し、より安価な代替策が存在する場合でも資本支出を重視する報酬体系を採用してきた。
委員会は声明で、現行モデルを「コスト効率の悪い資本集約的な解決策を優先させる構造的インセンティブを生み出す」と指摘。その上で、新たな枠組みは「パフォーマンス、手頃な価格、長期的なコスト安定性」を重視するものへと転換する可能性があると述べた。委員会のクリスティン・グール・サヴォイ委員長は公聴会で、「この構造が、過去10年間でニュージャージー州の電力配送料金が着実に上昇してきた理由の一端となっている可能性がある」と語った。
配電会社の報酬体系が料金上昇の一因に
ニュージャージー州最大手の電力会社PSEGの管轄地域では、配電料金が2020年1月から2024年4月までに月額19.24ドルから21.84ドルに、送電料金は20ドル前後から29ドル超に上昇した。多くの批判者は、この事業モデルが配電網への過剰投資を招き、利用者からの料金回収を通じて電力会社の収益を不当に膨らませていると指摘する。
新たな規制枠組みでは、新規プロジェクトに対する審査が厳格化され、電力会社の収益は事前に定められたサービス目標の達成度に応じて決定される可能性がある。NJBPUのボブ・ブラブストン事務局長は、規制当局が電力会社の規制報酬率(ROE)も見直す方針を示した。
ペンシルベニア州も同様の動き、全米に波及か
ニュージャージー州の動きは、隣接するペンシルベニア州でも議論が進む「規制の近代化」の動きと連動している。同州のジョシュ・シャピロ知事は先週、州内の電力会社に宛てた書簡で、規制報酬率の「透明性」と「正当性」を求める方針を表明した。
両州の動きは、米国最大の電力市場を形成するPJMインターコネクション管内全体に影響を及ぼす可能性があり、全米的な規制改革の先駆けとなる見込みだ。
今後の展望と課題
ニュージャージー州の規制改革は、電力会社の事業モデルを根本から見直すことで、長期的なコスト安定化と利用者負担の軽減を目指す。しかし、電力インフラへの投資が滞ることによる供給不安や、新たな規制枠組みの実効性に対する懸念も指摘されている。
規制当局は今後数カ月にわたり、関係者との協議を重ねながら具体的な改革案を策定する見通しだ。この動きが全米に波及すれば、電力業界の構造転換につながる可能性がある。