バージニア州の民主党知事エイビゲイル・スパンバーガー氏は、2023年11月の州知事選挙で圧勝した。選挙戦では電気代の上昇抑制を最重要課題に掲げ、「バージニア州民の電気代をより手頃にする」と公約していた。しかし、同州は世界最大級のAIデータセンターが集中する地域であり、今後さらなる電力需要の急増が見込まれている。こうした中、スパンバーガー知事は先月、炭素価格制度「RGGI(Regional Greenhouse Gas Initiative)」への再加盟を表明した。
RGGIは、米北東部・中大西洋地域の州が参加する炭素排出権取引制度で、発電事業者に対し、排出上限を設定し、超過分に課金する仕組みだ。同制度は再生可能エネルギーへの移行を促す一方で、コスト増加を招くため、消費者への負担転嫁が懸念されてきた。実際、2022年に前知事(共和党のグレン・ヤングキン氏)がRGGIから離脱した経緯もある。
しかし、スパンバーガー知事の再加盟決定は、AIデータセンターの急増による電力需要増が背景にある。同州の電力需要は今後10年間で2倍以上に膨らむと予測されており、 Dominion Energy(州内最大の電力会社)は既に電力不足のリスクを指摘している。RGGIへの再加盟により、州は排出権販売による収入を活用し、電力インフラの近代化や再生可能エネルギーへのシフトを加速させる狙いだ。
RGGIが電気代に与える影響
RGGIは、発電事業者に対し、排出上限を段階的に引き下げることで、再生可能エネルギーへの移行を促す。同制度の下では、発電事業者は排出枠を購入する必要があり、そのコストは電気代に転嫁される。例えば、バージニア州の主要電力会社であるDominion Energyは、過去RGGI加盟時に、平均的な家庭で月額約5ドルの追加負担が発生していたとされる。
一方で、RGGIの支持者らは、同制度が電気代の上昇を招く一方で、長期的には家庭の負担を軽減する可能性があると主張する。ウィリアム・ショーブ氏(バージニア大学名誉教授、RGGIの原案作成者)は次のように述べる。
「RGGIは確かに電気代にコストを課します。なぜなら、汚染がもたらす社会的コストを内部化しようとしているからです。しかし、重要なのは、優れた環境政策が逆進的な影響を与えないよう設計することです。適切に設計すれば、RGGIはデータセンターが電気代に与える負担を再配分するツールにもなり得ます。」
他州の動向と課題
RGGIに参加する10州は、排出上限を数年ごとに引き下げることで合意しており、これにより発電事業者は再生可能エネルギー(太陽光・風力)への移行を迫られる。同制度は2009年に発足し、これまでに石炭火力から天然ガスへの移行が進んでいる。しかし、電気代の上昇を懸念する州も少なくない。例えば、カリフォルニア州では民主党議員が州のキャップ・アンド・トレード制度の緩和を求めており、ニューヨーク州のキャシー・ホチュール知事(民主党)も、自動車や建物の排出にも適用されるキャップ・アンド・トレード制度の導入を先送りしている。
バージニア州がRGGIに再加盟することで、州内の電力需要増に対応しつつ、再生可能エネルギーへの移行を加速させることが期待される。しかし、電気代への影響を巡る議論は今後も続く見通しだ。