米国司法省は5月14日、オピオイド危機の一因となったとして責任を問われた製薬大手パデューファーマ社に対し、2250億ドル(約33兆円)の没収刑を下す見通しであることを発表した。これにより、同社が抱える数千件の集団訴訟の和解が正式に成立し、解決金の流れが加速する。

この刑罰は2020年に締結された同社と司法省との合意に基づくもので、連邦政府による民事・刑事双方の捜査を終結させるための措置であった。裁判官の承認を得られれば、他の刑罰は科されず、パデューファーマ社は他の訴訟の和解に向けた手続きを進めることが可能となる。

サックラー家による70億ドル規模の賠償金

2023年に和解が承認されたこの案件では、パデューファーマ社の親会社であるサックラー家が、今後15年にわたり最大70億ドル(約1兆円)を州政府、地方自治体、ネイティブアメリカンの部族政府、被害者個人らに支払うことが定められている。このうちの大部分は、オピオイド危機への対策資金として活用される見込みだ。

この和解は、製薬会社、卸売業者、薬局などが関与する一連の訴訟の中でも最大規模の一つであり、被害者個人や遺族への補償を含む唯一の主要な和解案件でもある。関連する和解全体の総額は500億ドルを超え、そのほとんどが過剰摂取危機の解決に充てられることとなっている。

パデューファーマ社の消滅と新会社「Knoa Pharma」の設立

パデューファーマ社は、新たな公益目的の会社「Knoa Pharma」へと移行する。同社は州政府によって任命された理事会によって運営され、公的利益のために活動することが義務付けられる。この再編は、米国史上でも最も複雑な企業再編の一つとされている。

パデューファーマ社の犯罪歴と背景

パデューファーマ社は2020年11月、連邦政府による3つの刑事告発を認めている。具体的には以下の内容であった。

  • 米国麻薬取締局(DEA)に対し、強力な処方箋鎮痛剤「オキシコンチン」の流用を防ぐ有効なプログラムを有していると虚偽の報告を行ったこと
  • 医師に対し、講演プログラムを通じてオピオイド処方を奨励するための報酬を支払ったこと
  • 電子カルテ会社に対し、患者情報を医師に送信させ、オピオイド処方を促進させるための報酬を支払ったこと

オキシコンチンの販売は2000年代のオピオイド危機の象徴的存在とされており、1996年に開催された販売員向けのイベントで、当時の上級幹部であったリチャード・サックラー(後に社長に就任)は、「処方箋の吹雪」を起こすよう求めた発言が知られている。

また、パデューファーマ社は市場に流出したオピオイド錠剤のごく一部しか製造していなかったものの、その積極的な販売戦略が危機の拡大に拍車をかけたという指摘もある。

和解の仕組みと今後の展望

パデューファーマ社は2250億ドルの没収刑を科される一方で、司法省は53億ドルの刑事没収金と28億ドルの民事責任金の徴収を見送ることで合意した。これらの金額の一部は、より広範な和解の一環として活用され、連邦政府もその一部を受け取る予定となっている。

サックラー家はオピオイド関連の訴訟からの保護を受ける一方で、同社は法人として消滅し、新たな公益目的の企業へと生まれ変わる。この再編は、オピオイド危機の解決に向けた重要なステップと位置付けられている。