フォードは、初期の電気自動車(EV)が市場に与えた影響が限定的だったことを公式に認めた。同社の「ブルー・オーバル」ブランドは、EV市場での存在感を高めるため、カリフォルニア州ロングビーチに新たなEV設計拠点を設立。350人のエンジニアチームが、EVの製造方法を根本から見直している。

3万ドル級EVピックアップが2025年にデビュー

フォードが目指すのは、コストを抑えたミッドサイズEVピックアップの投入だ。同社によると、この新型ピックアップは2025年に発売される予定で、価格は3万ドル前後に設定される見込み。これまでのフォードEVである「マスタング・マッハE」や「F-150ライトニング」は一定の販売数を確保したが、競合他社の安価なモデルに押され、利益率や市場へのインパクトで期待を裏切った。

フォードは、この新型EVピックアップを「ユニバーサルEVプラットフォーム」と呼ばれる新しい設計基盤のもとに開発。このプラットフォームは、3つの大型鋳造部品で構成され、その上にピックアップトラックのキャビンが搭載される仕組みだ。現在の「マーベリック」と同等のサイズ感ながら、荷台の側面が高く設計されているという。

修理のしやすさと48V技術が特徴

新プラットフォームの最大の特徴は、修理の容易さにある。衝突時のダメージを受けた場合でも、損傷した部品を切り取り、新しい部品と交換できる「カットライン」が設けられている。これにより、廃車リスクを大幅に低減し、長期的なコスト削減につながる。

また、EVの配線システムにも革新が加えられた。新型ピックアップは、ライトや電動窓など一部の部品を除き、主に48Vの電気システムを採用。従来の12Vシステムと比較して、配線の量を20%削減し、冷却ホースや接続部品も50%減少。その結果、組み立て時間は15%短縮され、生産効率が大幅に向上する見込みだ。

ロングビーチ拠点がEV開発の新たな拠点に

フォードの新EV設計拠点は、ロングビーチの「フォードEVデザイン・センター」に設置された。この拠点には、フォードのベテラン技術者に加え、スタートアップや家電業界からの新規採用者も加わる350人体制のチームが在籍。EVの製造工程をシンプルかつ低コスト化することを目指している。

同社は、この新型ピックアップが「トヨタ・RAV4」よりも広い室内空間を提供するとも発表。これにより、実用性と快適性の両立を図っている。

フォードのEV戦略の転換点

フォードにとって、この新型EVピックアップは、EV市場での競争力を取り戻すための重要な一手だ。同社は2029年までに米国市場の80%の車種を刷新する大規模な製品戦略を発表しており、その中核をEVが担う。新プラットフォームの採用により、コスト削減と生産効率の向上が実現すれば、フォードのEV戦略は大きな転換点を迎えることになる。

出典: CarScoops