2024年3月6日、ペンシルベニア州の不動産業者ブライアン・オニールは、州首席変革・機会担当官ベンジャミン・カーンシャーに緊急メールを送った。メールには、アマゾンが「州内のプロジェクトを全面的に凍結する」と通知したと書かれていた。同社は、地元自治体が許認可申請を次々と却下しているため、投資したプロジェクトの実行が不確実になったと説明していた。

オニール自身もフィラデルフィア郊外コーショホッケンのプロジェクトが2023年11月に阻止された経験を踏まえ、知事に対し「スポーツのようにプロジェクトを遅延させる目的で控訴される事態を防ぐべきだ」と訴えた。具体的には、ゾーニング決定に対する控訴に対し、プロジェクト価値の2倍の保証金を課す法案を提案。例えば20億ドルの開発プロジェクトが控訴で遅延すれば、40億ドルの保証金を課すべきだと主張した。

カーンシャーはこの要請を州政府高官に転送したが、シャピロ知事の事務所は「法案が提出されていないため、現時点での対応は不可能」と回答した。オニールの代理人は返答を約束したが、その後連絡はなかった。アマゾン側は「ペンシルベニア州への深いコミットメントを維持する」とする声明を発表するにとどまった。

AIデータセンターの恩恵と反発の狭間で

この一連のやり取りは、AIデータセンターの急増を歓迎した州知事が直面するジレンマを象徴している。シャピロ知事は2023年6月に「AIに全力投資する」と表明し、1000億ドル規模のデータセンター投資を呼び込んだ。このうち約200億ドルはアマゾンによるもので、2025年にはAIインフラの大規模展開を発表している。

しかしその一方で、住民からは開発の透明性不足や環境負荷への懸念が高まっている。メイン州では先週、州知事がデータセンター全面禁止法案を拒否したことで、民主党支持層からの反発を招いた。同州のジャネット・ミルズ知事は、連邦上院議員選挙の予備選挙で進歩派の挑戦者に直面しており、経済成長と住民の反発のバランスを模索している。

州知事の難しい舵取り

シャピロ知事も同様の課題に直面している。AIデータセンターは経済成長をもたらす一方で、地元自治体の反対や住民の不満を招いている。特に、許認可プロセスへの控訴が頻発し、開発業者の不満が高まっているのが現状だ。オニールの提案は、こうした控訴の乱用を防ぐための一策として注目を集めたが、実現には州議会の立法が必要となる。

シャピロ知事の事務所は、具体的な対応策について明言を避けている。しかし、AI革命がもたらす経済効果と住民の反発の狭間で、州知事の判断が今後ますます注目を集めそうだ。