米国の地方自治体にとって、選挙制度の公平性を保障する「投票権法」の実効性が大きく低下した。最高裁判所は6月、投票権法の重要な条項を骨抜きにする判決を下し、地方自治体が党派的な選挙区改定や現職議員の保護といった目的で、マイノリティの選挙権を軽視できるようになった。

投票権法の「セクション2」は、これまでマイノリティの選挙権を侵害する選挙区割りやルールを、司法の場で争う根拠となってきた。しかし、今回の判決により、原告が違反を立証するハードルがさらに高まり、実効性が大幅に低下した。

地方選挙区改定の自由化が招く影響

専門家らは、今回の判決が地方選挙区の再編に与える影響を懸念している。マイケル・リー(ブレナン・センター・フォー・ジャスティス)は「地方議会、郡委員会、教育委員会の選挙区改定が全国で加速するだろう。自治体が『何をしても自由だ』と言い出す可能性がある」と指摘する。

投票権法の初期の勝利の一つは、市や郡、州議会における「全体選挙区制」の廃止だった。全体選挙区制では、特定の地域のマイノリティ票が分散され、議員選出が困難になる。しかし、セクション2の実効性が失われれば、自治体が再び全体選挙区制を導入する可能性が出てきた。

マイノリティ代表の消滅リスク

ルイジアナ州で黒人議員を輩出する選挙区の再編に関わった原告、プレスコット・ロビンソン氏は「この国は奴隷制度廃止当時の状況に逆戻りするだろう。しかし、この国はそれ以上の進歩を望まないようだ」と憂慮する。

ミシシッピ州NAACPのチャールズ・テイラー事務局長は、今回の判決を「黒人有権者への裏切り」と強く非難し、選挙全体にわたる影響を懸念している。

2026年以降の選挙区改定に暗雲

マイケル・マクドナルド(フロリダ大学政治学教授)は「投票権法は、数千のコミュニティに議席を保障してきた。しかし、2030年の国勢調査後に行われる選挙区改定では、人種的代表性が大幅に後退する可能性が高い」と警告する。

一方で、2026年の中間選挙に向けた選挙区改定は間に合わない可能性が高いものの、民主党知事候補らは今後の選挙区改定を阻止するための選挙戦を展開することが予想される。

「これはスリップスロープ(滑り坂)ではない。崖からの転落だ」
— チャールズ・テイラー(ミシシッピ州NAACP事務局長)

今後の選挙戦への影響

今回の判決は、地方選挙だけでなく、州知事選挙や議会選挙にも波及する可能性がある。民主党は、選挙区改定を阻止するために、知事選挙で勝利する戦略を強化する必要に迫られるだろう。

出典: Axios