米国上院で共和党が推進していた選挙制限法案「SAVE法(Secure America’s Voter Eligibility Act)」が、民主党のフィリバスターにより事実上頓挫した。同法案は、有権者登録に市民権・居住地証明の提出を義務付け、郵便投票の廃止、30日ごとの有権者名簿更新を求めるなど、選挙プロセスに多大な負担を課す内容だった。

同法案は、不法滞在者による選挙不正が横行しているとする右派の主張を根拠にしていたが、不法滞在者はそもそも選挙権を有していない。また、トランプ前大統領は今年6月にも選挙人ID法案を試みたが、連邦判事から「有権者に不当な負担を強いる」と却下されている。

共和党内の分裂とトランプの圧力

トランプ氏は3月に上院議員らに対し、「SAVE法が中間選挙を保証する」と述べ、法案成立を最優先課題と位置付けた。さらに「他の全ての法案を拒否する」と議員をけん制したが、状況は一変。直近の上院投票では、法案への賛成は50票に届かず、4人の共和党議員が民主党側に回った。

法案の頓挫は、共和党の支持基盤を刺激する可能性があり、党内ではフィリバスター廃止論が再燃しかねない。しかし、上院多数党院内総務ジョン・スーン氏をはじめ、党幹部の多くは慎重な姿勢を崩していない。

「フィリバスターの維持は全議員の共通認識だ。民主党が廃止を主張するのが唯一の違いだ」
—共和党上院議員ロン・ジョンソン

選挙不正の根拠なき主張と司法の判断

SAVE法の骨子は、右派メディアが主張する「不法滞在者による選挙不正」という根拠のない陰謀論に基づいていた。しかし、不法滞在者は選挙権を有しておらず、実際の選挙不正は極めてまれだ。6月の選挙人ID法案に対しても、連邦判事は「有権者の権利を侵害する」と厳しく批判した。

共和党内の分裂が鮮明になる中、SAVE法の頓挫は党の選挙戦略に大きな影響を与えそうだ。今後、党内の調整がさらに難航する可能性も否定できない。