北カロライナ州を含む米国の一部の州では、配偶者を奪った第三者に対し、慰謝料として数百万ドル規模の損害賠償を求める「家庭破壊(alienation of affection)」訴訟が認められている。この訴訟は、配偶者間の愛情関係を「破壊した」とされる第三者に対し、被害を受けた配偶者が提起できるものだ。
北カロライナ州では特にこの訴訟が多発しており、2025年には民主党系の元議員(当時アリゾナ州選出)が警備員との不倫で元妻から提訴された。元議員は不倫を認めたものの、具体的な主張の多くを否定し、関係は北カロライナ州外で行われたとして訴訟の却下を求めている。
こうした訴訟では、被害者が高額な損害賠償を請求するケースが少なくない。2023年には、TikTokインフルエンサーが既婚女性の夫を誘惑したとして、175万ドルの支払いが命じられた。さらに2011年には、ビジネスオーナーの元妻が3,000万ドルの支払いを命じられた事例もある。北カロライナ州には損害賠償額の上限がなく、被害者が多額の賠償金を獲得する可能性がある。
「家庭破壊」訴訟の成立要件とは
「家庭破壊」訴訟が成立するには、以下の要件を満たす必要がある。
- 第三者の行為:配偶者間の愛情関係を破壊するために、第三者が「合理的な人が予測しうる行為」を行ったこと
- 因果関係:第三者の行為が、配偶者間の愛情関係の破壊に直接つながったこと
- 故意または過失:第三者が故意または重大な過失により、配偶者間の関係を破壊したこと
注目すべきは、第三者が配偶者と肉体関係を持ったことを証明する必要がない点だ。例えば、単に配偶者に「別れるべきだ」とアドバイスしただけでも、訴訟の対象となる可能性がある。
廃止の動きが加速する「家庭破壊」法
こうした訴訟は、配偶者の愛情を「財産」とみなす差別的な法理に基づいており、廃止の動きが広がっている。
- ユタ州:2024年5月に「家庭破壊」訴訟の権利を廃止する法律が施行される。
- ニューメキシコ州:2024年1月、同州最高裁が「家庭破壊」訴訟を廃止。同法が「時代遅れで不公平な根源」を持つと指摘し、特に「妻は夫の財産」とみなす封建的な起源を批判した。
ニューメキシコ州最高裁は、こうした訴訟が「人間の尊厳を侵害する」と断じ、配偶者の愛情を「財産」として扱う考え方を否定した。また、法律が「配偶者は誰に愛情を注ぐかを自ら選択する主体性を持たない」との前提に立っていることも問題視した。
法廷闘争よりもカップルカウンセリングを
不倫や裏切りは心を傷つけ、屈辱的な経験となる。しかし、愛情を「財産」とみなし、法廷で争うことは、被害者にとっても加害者にとってもさらなる傷を生むだけだ。
「法廷に費やすお金やエネルギーは、カップルカウンセリングやストレス発散、あるいはアイスクリームで癒やす方が、はるかに建設的だろう。」
「家庭破壊」訴訟は、本来であれば個人間の問題であるはずの事柄を、法的な争いに変えてしまう。被害を受けた側にとっても、加害者とされた側にとっても、このような訴訟は解決策とはなり得ない。むしろ、カップルで向き合う時間や、自分自身の癒やしに費やす方が、より健全な選択と言えるだろう。