米国の移民数十万人が、クリスティ・ノーム元国土安全保障長官による一時的保護ステータス(TPS)の廃止を巡り、最高裁判所に最後の望みを託した。同長官は昨年、11カ国の難民に与えられていたTPSを突然廃止する決定を発表。移民たちはその決定過程に司法審査を求め、最高裁が本日、ハチとシリアのTPS廃止に関する二つの訴訟を同時に審理することを決定した。
なぜ重要か:TPS廃止の背景
TPSは、自然災害や紛争などの危機的状況にある国の国民に対し、米国への一時滞在と就労を認める制度だ。通常、政府は定期的に各国の状況を再評価し、TPSの継続または廃止を決定する。しかし、ノーム長官は昨年、11カ国のTPSを廃止。その決定過程には不透明な点が多く、移民側は司法審査を求めている。
移民側の主張:決定過程の不備を指摘
移民側の弁護士、アヒラン・アルラナタム氏は「政府は、司法がTPSに関するいかなる決定にも介入できないと主張している。もし政府の主張が認められれば、政府は国の状況を一切審査することなくTPSを廃止できることになる」と述べ、その重大性を訴えた。
また、法廷文書によれば、ノーム長官がTPS廃止を発表した際の根拠資料は、国務省から国土安全保障省への2文のメールのみだったという。そのメールには、各国の状況に関する記述は一切なかった。
ニューヨーク・タイムズ誌の取材に応じた元移民局幹部は「数か月前まで危険だと報告していた国が突然安全だと判断されるなど、完全な茶番だった」と証言した。
政府側の反論:司法審査の排除を主張
政府側は法廷文書で「連邦裁判所は、TPSの決定過程や実質的な理由に関わらず、その決定を審査することはできない」と主張。ノーム長官はTPSを「一時的なもの」に戻すことで制度の健全性を回復したと説明していた。
TPS保持者の現状と今後
現在、米国には約130万人のTPS保持者がいる。トランプ政権下で15カ国のうち11カ国のTPSが廃止されたが、残りの国々についても今後検討される見込みだ。特にハチのTPS保持者は、人種的動機に基づく差別的な決定だったと主張。選挙戦当時からトランプ前大統領がハチのTPS廃止を計画していたと訴えている。
米国下院では、ハチのTPS保護を復活させる超党派法案が可決されたが、上院では審議されていない。
今後の展望:最高裁の判断が鍵に
仮に移民側がハチとシリアのTPS廃止の違法性を認めさせたとしても、新たな国土安全保障長官が再審査を行えば、同様の結論に至る可能性がある。最高裁の判断が、今後のTPS制度の行方を左右することになる。