米国第11巡回区控訴裁判所は2024年6月11日、ロイ・ムーア元アラバマ州最高裁判事が選挙支援団体「 Senate Majority PAC(SMP)」を相手に起こした名誉毀損訴訟について、SMP側の主張を認める判決を下した。
ムーア氏は2017年の上院議員補欠選挙に共和党候補として立候補したが、選挙直前に複数の女性から、少女時代に性的な行為を求められたという告発が報じられた。これに対し、SMPは選挙広告で、ムーア氏が「ガズデンモールで少女に性的な誘いをかけたために追放された」と主張するフレームと、「14歳の少女(サンタの助手)に声をかけた」とするフレームを組み合わせた。
ムーア氏はこの広告により名誉を傷つけられたと主張し、SMPを提訴。陪審はムーア氏に820万ドルの損害賠償を認める評決を下したが、控訴審ではこの判決が覆された。
「暗示的な名誉毀損」の立証が不十分
控訴裁判所は、ムーア氏の主張が「暗示的な名誉毀損(defamation-by-implication)」に該当するかどうかを検討。裁判所は、広告の二つのフレームを組み合わせても、ムーア氏が具体的に14歳の少女に性的な行為を求めたという明確な事実を示すものではないと判断した。
「暗示的な名誉毀損」とは、事実の並列によって第三者に悪意ある解釈を誘導する行為を指す。しかし、このケースでは、広告の文言が複数の解釈を許すため、悪意ある意図(actual malice)の立証が困難であるとされた。
裁判所はまた、SMPが広告の事実関係を十分に調査せずに放送したという「reckless disregard(無謀な軽視)」の立証も不十分と結論づけた。
選挙結果への影響と今後の展望
ムーア氏は選挙で敗北したが、控訴審の判決により、名誉毀損の立証責任が不十分であったことが確認された。この判決は、選挙広告における事実の提示方法に関する重要な指針となる可能性がある。