米国の裁判所は1月29日、独立系ジャーナリストのジョーダン・アーサー・ブルーム氏が、ITコンサルタントのヤアコフ・アペルバウム氏とその企業XRVision社に対し、虚偽の「イスラエル諜報員」との報道を行ったとして、名誉毀損に基づく80万ドル(約1億2000万円)の損害賠償を命じた。

アペルバウム氏はサイバーセキュリティと分析技術を手掛けるXRVision社の創業者で、2020年にハンター・バイデン氏のラップトップのデータ分析に関与したことで注目を集めた。ブルーム氏は自身のSubstackブログで、アペルバウム氏を「イスラエル諜報員」と主張する記事を掲載。この記事はTwitterなどで拡散され、さらに他のウェブサイトでも転載された。

裁判所は、ブルーム氏の主張が事実に基づかないだけでなく、アペルバウム氏の職業的信用を著しく傷つける内容であると認定。名誉毀損の成立要件を満たす「名誉毀損そのもの(defamation per se)」に該当すると判断した。

裁判所の判断内容

  • 事実確認の不備:ブルーム氏は記事掲載前にアペルバウム氏やXRVision社に取材を行わず、事実確認を怠った。
  • 虚偽の主張:アペルバウム氏はイスラエル国籍を放棄して米国籍のみを有しており、外国の諜報機関との関係はない。
  • 職業的影響:サイバーセキュリティ業界で政府機関との協力実績があるアペルバウム氏にとって、諜報員とのレッテルは業務に重大な悪影響を及ぼす可能性が高い。

判決では、補償的損害賠償として1人当たり7万5000ドル(計15万ドル)、懲罰的損害賠償として1人当たり12万5000ドル(計25万ドル)の計80万ドルが支払われることが確定した。

背景と経緯

2020年、ハンター・バイデン氏のラップトップが報道機関に提供され、そのデータ分析を巡る論争が巻き起こった。アペルバウム氏はXRVision社を通じてラップトップのデータ分析に関与したが、ブルーム氏はこれを「イスラエル諜報員による米国の顔認識技術への攻撃」との虚偽のストーリーに仕立て上げた。

「ブルーム氏は、自身の先入観に基づくストーリーを事前に構築し、それを裏付ける十分な調査を行わないまま、アペルバウム氏をそのストーリーに無理やり当てはめた」
— 米連邦地裁の判決文より

この事件は、ジャーナリズムの倫理と事実確認の重要性を改めて問うものとなった。

出典: Reason