米株式市場の代表的な指数であるS&P500が5月13日に史上最高値を更新したのに対し、ビットコインは同日に8万ドルのサポート水準を失い、一時78,759.70ドルまで下落した。これは、ビットコインが株式市場との連動性を強めている一方で、その根本的な構造的課題を浮き彫りにする結果となった。

株式市場の構造的変化とビットコインの乖離

従来、ビットコインは株式市場、特にハイテク株との連動性が強い「高ベータ資産」として位置づけられてきた。しかし、直近の株式市場の上昇は、主にAI関連銘柄を中心とした「メガキャップ」と呼ばれる大型株に集中しており、その恩恵はビットコインには及んでいない。

5月13日のS&P500は史上最高値を更新したが、その一方で、S&P500を構成する11セクターのうち7セクターが下落。ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダックでは、値上がり銘柄数を値下がり銘柄数が上回る「弱気な市場センチメント」が見られた。このような状況下で、ビットコインは8万ドルのサポートを失い、流動性資産としての脆弱性を露呈した。

メガキャップがけん引する株式市場

S&P500の上昇は、時価総額上位10銘柄(構成比36.5%)によってけん引されている。特に、NVIDIA、Apple、Microsoftといったテクノロジー大手が主導しており、これらの銘柄はAI関連の収益拡大や自社株買いプログラム、将来の業績見通しの改善など、キャッシュフローを生み出す企業が中心となっている。

ゴールドマン・サックスの推計によると、AI投資がS&P500の今年の1株当たり利益(EPS)成長の約40%を牽引するとされ、大手クラウドインフラ企業は2026年までに約6,700億ドルを投資する計画だ。これらの企業は、金利上昇などのマクロ経済の逆風に対しても、EPSの向上やAI収益の拡大、自社株買いなどを通じて株価を支える構造となっている。

ビットコインの構造的課題:流動性への依存

一方、ビットコインにはキャッシュフローや利益成長といった「収益の裏付け」が存在しない。ビットコインの価値は、主に市場の流動性に依存しており、流動性が縮小すると価格が下落する構造となっている。4月の生産者物価指数(PPI)の上昇を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測が高まり、米ドル高と米国債利回りの上昇が見られた。これは、利回りを生まないビットコインにとっては、価値評価の「直接的なコスト」として機能する。

相関性の高さとベータの低下

暗号資産分析会社K33の調査によると、ビットコインの30日間のナスダックとの相関係数は0.7を超えており、依然として株式市場のマクロサイクルの影響を強く受けていることが確認された。しかし、ナスダックが30日間で10%以上上昇した際には、ビットコインのアップサイドベータ(上昇時の相対的な変動性)が低下する傾向が見られるという。

具体的には、3月30日から5月8日までの30日間でナスダック先物は16年ぶりの強い上昇(+27%)を記録した。しかし、この間にNVIDIAは45%、QQQ(ナスダック100指数)は28%上昇したのに対し、ビットコインはわずか4%の上昇にとどまり、その後8万ドルのサポートを失った。これは、株式市場の上昇が流動性の拡大ではなく、特定のキャッシュフローを生む銘柄に集中したことで、ビットコインが恩恵を受けられなかったことを示している。

「株式市場の上昇は、流動性の拡大ではなく、特定のキャッシュフローを生む銘柄に集中しており、ビットコインはその恩恵を受けられていない。ビットコインの価値は流動性に依存しており、流動性が縮小すると価格は下落する構造的な脆弱性を抱えている。」

今後の展望とリスク要因

今後、FRBの金融政策がビットコインに与える影響はさらに大きくなると予想される。特に、利上げサイクルが継続する中で、米ドル高と米国債利回りの上昇がビットコインの価格圧迫要因となる可能性が高い。また、株式市場の上昇がメガキャップに集中し続ける限り、ビットコインがその恩恵を受けることは難しいだろう。

ビットコインの価格は、今後も株式市場のセンチメントやマクロ経済の動向に大きく左右されることが予想される。特に、流動性の縮小や米ドル高の進行は、ビットコインにとって重大な下押し圧力となる可能性がある。