アメリカで「金持ちになる」ためのルールは、時代とともに常に変化してきた。歴史家のジョセフ・ムーア氏は、新著『How to Get Rich in American History: 300 Years of Financial Advice That Worked (& Didn’t)』で、過去300年にわたるアメリカ人の経済行動を徹底分析。その結果、歴史は決まった「成功の公式」を与えてくれないと指摘する。成功のカギは柔軟性と複数の戦略の組み合わせにあり、一時的な「金持ち術」に踊らされないことが重要だという。
時代ごとに変わる「成功の条件」
ムーア氏は、アメリカの歴史を通じて「金持ちになる方法」がいかに変化してきたかを解説する。例えば、1676年には植民地人がバージニア州都を焼き払い、「庶民はもはや成功できない」と叫んだ。1800年代には「成功への階段の段差が切り落とされた」と演説が行われた。1980年には「ベビーブーマーは退職できない」との見出しが踊った。しかし、これらの予言はことごとく外れている。
現在、アメリカでは貧困層出身の子どもの6割が貧困から脱出し、4割が中流階級以上に上り詰めている。その一方で、富裕層出身者の64%は没落し、上位1%の富裕層の90%の孫世代は裕福ではない。アメリカの社会移動性は完璧ではないが、想像以上に高いのだ。
ベビーブーマー世代の「特別な時代」
ムーア氏は、ベビーブーマー世代が経験した「特別な時代」についても言及する。例えば、40年間同じ職に就き、給与の10%を株式に投資するという戦略は、歴史的に見ると半数以上のケースで退職資金を確保できなかった。ベビーブーマーは自分たちの成功体験が普遍的なものだと考えがちだが、歴史的にはそうではないのだ。
また、1970年代生まれのムーア氏が生まれた当時のアメリカは、現在よりも所得が30%低く、労働時間は長く、リスクも高かった。当時の平均的なアメリカ人は、現在の半分以下の服しか所有しておらず、残りの服を手に入れるために週60時間働かなければならなかった。保険も未発達で、住宅や収入を守る術はなかった。
「成功のカギ」は柔軟性と複数の戦略
ムーア氏は、歴史が教える「成功のカギ」として以下のポイントを挙げる。
- 柔軟性を持つこと:歴史は決まった「成功の公式」を与えてくれない。時代に応じて戦略を変える柔軟性が求められる。
- 複数の戦略を組み合わせること:単一の方法にこだわらず、複数のアプローチを試すことが重要だ。
- 一時的な「金持ち術」に踊らされないこと:時代ごとに「新しい金持ち術」が登場するが、その多くは一時的なブームに過ぎない。
ムーア氏は、現在のアメリカがかつてないほど「機会に満ちた土地」であると指摘する。しかし、その機会を最大限に活用する方法は時代とともに変化する。歴史から学び、柔軟に対応することが、真の成功への道なのだ。