書籍の出版は困難を伴うが、それをいかにして売り上げにつなげるかはまた別の難題だ。新しいプラットフォームが読者のオンライン上の集まり方や交流の仕方を変える中、著者たちは自らの執筆を紹介する場でありながら、同時に発見のエンジンとしても機能するプラットフォームに注目している。
サブスタックが書籍プロモーションの新たな主戦場に
これまでの書籍プロモーションは、書店やニューヨーク・タイムズのベストセラーリストが中心だった。しかし今、その中心はアルゴリズムに委ねられ、出版社は著者自身のソーシャルメディアやその影響力にますます依存するようになっている。そんな中、サブスタックが注目を集めている。
米国の人気ドラマ「ガールズ」のクリエイター、リナ・ダンハムは、新しい自伝「Famesick」のプロモーションにサブスタックを活用した。自身のサブスタックニュースレター「On Substack」で行われたインタビューで、ダンハムは率直にこう語った。「信頼できる人に聞いたところ、少なくとも書籍の売り上げという点では、サブスタックのフォロワー1人は、InstagramやXのフォロワー数人分に相当するそうです。実際の数字はわかりませんが、経験的には確かにそうだと感じています。このプラットフォームには、文章への深い愛情があふれています。」
ダンハムはプロモーション期間中、サブスタック上のさまざまなニュースレターに出演した。例えば、エミリア・ペトラルカの「Shop Rat」(3万2千人の購読者)や、エミリー・サンドバーグの「Feed Me」(15万人以上の読者)などだ。ダンハムによれば、これらのニュースレターは特定のニッチな読者層をターゲットとしており、一般的なソーシャルメディアのフォロワーよりもはるかにエンゲージメントが高いという。「特定の読者層がいかに熱心かを目の当たりにしてきました。フォロワー数は多くてもエンゲージメントが低いニュースレターよりも、少数でも熱狂的なファンを持つニュースレターの方が価値があると感じています」とダンハムは述べている。
サブスタックの強み:アルゴリズムに左右されない直接的なコミュニケーション
サブスタックの最大の特徴は、著者と読者との直接的なコミュニケーションが可能な点だ。従来のソーシャルメディアでは、アルゴリズムの変動によって投稿のリーチが左右されるリスクがあったが、サブスタックでは自分の投稿が確実に読者に届くという安心感がある。
料理本「Don’t Think About Dinner」の著者、ジェン・ルーケは、サブスタックを活用して独自のコミュニティを築いた一人だ。彼女はこう語る。「私の購読者は必ず私の投稿を見てくれます。その一貫性が、読者にレシピやガイドを試してもらうきっかけになっています。」ルーケにとって、サブスタックは書籍が発売される前から自身の活動を支えてきたプラットフォームとなった。「ニュースレターを読んでくれる人は、書籍も読んでくれる可能性が高いと思います。私の戦略は、さまざまなソーシャルプラットフォームを活用しながら、その中でもサブスタックを中心に据えることでした。」
出版社も注目するサブスタックの可能性
リテラリー・エージェントでEmpire Literaryの社長、アンドレア・バルズビはこう指摘する。「10年前までは、書籍業界の中心は書店とニューヨーク・タイムズのベストセラーリストでした。しかし今、発見の場はアルゴリズムに委ねられ、出版社はソーシャルメディアの力にますます依存しています。」
ソーシャルメディアが書籍の売り上げに与える影響は多岐にわたる。例えば、TikTokの「BookTok」コミュニティは、「The Song of Achilles」や「It Ends With Us」、「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」といった作品の売り上げを大きく押し上げた。しかし、これらのプラットフォームはアルゴリズムの偶然に依存する部分が大きい。一方、サブスタックは、著者と読者との直接的なつながりを提供する点で、より確実なプロモーション手段として注目を集めている。
まとめ:サブスタックが書籍業界を変える
書籍のプロモーション手段は多様化しており、サブスタックはその中でも特に注目を集めているプラットフォームの一つだ。アルゴリズムに左右されない直接的なコミュニケーション、熱心な読者層の獲得、そして書籍発売前からのコミュニティ構築といったメリットが、多くの著者や出版社に支持されている。今後、サブスタックが書籍業界の新たな主戦場として定着するのか、その動向が注目される。