テキサス州ケリー郡バムブルビー丘陵地区。2025年7月4日の大洪水で壊滅的な被害を受けた一帯に、 Kylie Nidever(35歳)は足を踏み入れた。かつて幼少期に近くの小川で遊んだ思い出の地だ。しかし今回、自宅は奇跡的に浸水を免れた。

バムブルビー丘陵地区の住民たちは、被災後も「なぜ政府は危険な場所での建設を止めなかったのか」と疑問を抱き、再建に意欲を示す人々に驚きを隠せない。Nideverは「次に洪水が起きたら、もっと被害は大きくなる。この地区で命を落とす人も出るかもしれない」と不安を口にする。彼女はすでに転居を検討している。

2024年の大洪水はテキサス州史上最悪の災害の一つとなり、5郡で137人の死者が確認された。そのうちの多くは、連邦政府が洪水リスクが高いと指定していた地域に滞在していた。にもかかわらず、州議会は長年にわたり洪水対策法案を却下し続けてきたことが、ProPublicaテキサス・トリビューンの調査で明らかになった。

過去60年で50以上の法案が却下

調査チームは過去60年に遡り、州議会が却下した洪水対策関連の法案を50件以上特定した。その中には、洪水リスクの高い地域での建設規制や、浸水しやすい建物の嵩上げ義務化、廃棄物処理施設の水辺近接禁止など、命を守るために有効とされる重要な措置が含まれていた。

テキサス州はフロリダ州に次いで、洪水リスクのある地域に65万棟以上の建物が存在すると推計されている。しかし州議会は、こうしたリスクを軽減するための法整備を怠ってきた。

「州は住民の安全を守る責務を果たせていない」

テキサス州出身の環境史家Char Miller氏(現・カリフォルニア州ポモナ大学教授)は、調査結果を受け「州が法整備を怠ったことで、多くの命が失われた可能性がある。州の最も重要な役割は、住民の健康と安全を守ることだ。テキサス州はそれを果たせていない」と厳しく指摘した。

バムブルビー丘陵地区の住民たちは、洪水警報システムの整備不足や混乱した避難体制を批判する声も上がった。しかし、州議会は「想定を超える規模の災害だった」と主張し、根本的な対策を講じることはなかった。

専門家らは、州議会が法案を却下した背景に、開発業者や地元自治体の利害が影響している可能性を指摘する。テキサス州では洪水リスクの高い地域でも開発が進み、住民の安全よりも経済成長が優先されてきた歴史がある。

「州議会が法整備を怠ったことで、多くの命が失われた可能性がある。州の最も重要な役割は、住民の健康と安全を守ることだ。テキサス州はそれを果たせていない」
— Char Miller, テキサス環境史家

バムブルビー丘陵地区の住民たちは、今後も再び洪水に襲われる可能性を懸念しながら、不安な日々を過ごしている。Nideverは「誰かがこの地区での建設を止めてくれるのか。止めなければ、次はもっと多くの命が失われる」と訴える。

出典: ProPublica