科学政策の要、国家科学審議会が解任

米国の科学技術政策を支える国家科学審議会(NSB)の全22名が、先週一斉に解任された。これは、トランプ政権による科学基盤への攻撃の象徴的な出来事として、科学界に衝撃を与えている。

「暗黒の瞬間」と専門家が嘆く

メーン大学の古生態学者ジャクリーン・ギル博士は、「全委員の解任は、過去1年半で最も暗い瞬間の一つだ。科学的専門知識と透明性の最後の砦が一夜にして崩壊した」と強調する。同委員会は、米国の科学研究を監督する国家科学財団(NSF)の運営に不可欠な役割を担っており、化学、工学、生物学、環境科学、コンピュータ科学、技術分野の研究を支援してきた。

「科学は大統領の気まぐれではない」

NSBは1950年に議会によって設立された独立機関で、大統領が任命する委員は6年ごとに交代する。委員は各分野の第一人者が選ばれ、議会や大統領に科学的助言を提供することが期待されてきた。しかし今回の解任により、NSFのウェブサイトには「新メンバーを任命中」と表示されるだけとなった。

オレゴン大学の化学教授で元NSB委員のジェラルディン・リッチモンド博士は、「この委員会は、国家にとって重要な課題について議会と大統領に助言する上で極めて重要だ」と指摘する。リッチモンド博士は、オバマ前大統領とトランプ前大統領の下で委員を務めた経験を持つ。

政治的忠誠が科学的信頼性を脅かす

専門家らは、後任の委員が科学的専門知識よりも政治的忠誠を重視して選ばれる可能性が高いと懸念する。これにより、米国の科学的信頼性が損なわれ、長期的な研究競争力の低下につながる恐れがあるという。

カリフォルニア大学の上級研究員カルロス・ハビエル・マルティネス博士は、「2025年1月から続くこの政権の科学政策の流れを考えれば、今回の解任は残念ながら驚くべきことではない」と述べた。

米国の科学的優位性が揺らぐ

NSBの解任は、米国の科学研究の基盤を揺るがす重大な出来事だ。同委員会は、次世代の科学者育成や研究資金の配分、さらには国家のイノベーションを支える重要な役割を果たしてきた。しかし、政治的介入が強まることで、米国の科学的優位性が損なわれ、国際的な競争力の低下が懸念される。

科学界の関係者は、今後も科学政策への政治的介入が続くことで、米国の科学研究が長期的なダメージを受ける可能性があると警告している。