米国の移民・関税執行局(ICE)を「National Immigration and Customs Enforcement(NICE)」に改称する案を、トランプ前大統領が提案した。同氏は2024年6月2日、ソーシャルメディアで「ICE」を「NICE」と呼ぶことで、メディアが常に『NICE捜査官』と発言するようになると主張した。
トランプ氏は「素晴らしいアイデアだ!実行せよ。大統領DJT」と投稿。しかし、この改称案は同氏のこれまでの「強硬路線」のイメージとは相反するものだ。実際、ICEに対する世論は悪化しており、改称が問題解決につながるかは疑問視されている。
ICEの支持率は低迷、改称が逆効果に
米国民のICEに対する評価は厳しく、マサチューセッツ大学の世論調査(6月発表)によると、ICEの業務遂行に対する不支持率は6割近くに達している。また、フォックスニュースの世論調査では、2018年の不支持率41%から2024年には58%に上昇。改称によってイメージが改善される可能性は低いと専門家は指摘する。
リバプール大学の上級講師で、政府機関の名称や誤解を招く政治団体名について研究するブライアン・クリストファー・ジョーンズ氏は「NICEという改称案は、むしろ批判を増幅させる可能性がある」と懸念を示す。
米国政府機関の「後方頭字語」戦略
米国政府では、機関名に「後方頭字語(backronym)」を用いるケースが増えている。これは、頭字語が持つイメージを逆手に取り、好意的な響きを与える手法だ。例えば、2020年の新型コロナウイルス対策法「CARES Act(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act)」や、2022年の半導体法「CHIPS and Science Act(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors and Science Act)」などが該当する。
こうした名称変更は、法案の内容を短く印象的に伝える狙いがある一方で、時には世論操作の手段として悪用されるケースもある。例えば、2001年に成立した「USA PATRIOT Act(Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act)」は、テロ対策を名目に監視体制を拡大したが、一方で「SAVE Act(Safeguard American Voter Eligibility Act)」は投票抑制法案として知られる。
改称がもたらすリスク
ICEの改称案は、単なる名称変更にとどまらず、同局の実態を覆い隠す可能性がある。ジョーンズ氏は「NICEという名称が、同局の強硬な取り締まり政策を和らげるイメージを与えるかもしれないが、実際の業務内容が変わるわけではない」と指摘する。
改称が逆効果に終わる可能性も否定できない。米国民のICEに対する不信感は根強く、名称変更が批判の矛先をさらに強めるだけという見方もある。