フォード・レーシングは、米国ノースカロライナ州のzMAXドラッグウェイで開催されたNHRA 4-Wideナショナルズにおいて、同社の「マスタング・コブラジェット2200」が世界最速のEV(電気自動車)として新記録を樹立したと発表した。
コブラジェットの名称はフォードのレーシングカーの歴史と深く結びついているが、今回の2200モデルは従来のイメージを覆す最新技術で進化を遂げたEVだ。前モデルのコブラジェット1800(1800馬力)と比較して、重量と複雑さを軽減しながら出力を大幅に向上させた完全新設計のマシンとなっている。
2200馬力の電気モーターと革新的バッテリーシステム
コブラジェット2200の心臓部には、2200馬力を発揮する2基の電気モーターが搭載されている。バッテリーシステムは、床下にメインバッテリー、リアに2基、フロントに1基のバッテリーを配置。フロントバッテリーは重量配分を調整するために移動可能な設計となっている。具体的なバッテリー容量は未公表だが、充電時間は約20分で、NHRAの45分間のターンアラウンド時間内で完了する。
前モデルのコブラジェット1800は4基のモーターで1800馬力を発生していたが、各モーターの重量はコブラジェット2200のモーターよりも重かった。フォードは、次世代モデルで重量と複雑さを削減しつつ、出力を大幅に向上させることに成功した。
ドラッグレースに最適化されたシステム
コブラジェット2200は、マルチスピードトランスミッションと遠心クラッチを採用している。EVでありながらクラッチを搭載するという点で驚きを与えたが、NHRAによると、このシステムにより発進時のトラクションと安定性を向上させ、モーターの慣性を制御することが可能になるという。クラッチは、まるで特殊なラウンチコントロールのような役割を果たし、発進後は直結ドライブに切り替わる仕組みだ。
安全性と信頼性の向上
フォードは、コブラジェット2200の安全性向上にも注力した。特筆すべきは、高電圧システムを瞬時に遮断する「火工品式回路遮断装置」の開発だ。ドライバーやチームメンバーがボタンを押すと、小さな爆発装置が作動し、主電気回路を即座に切断する仕組みとなっている。
世界最速EVの記録達成
この驚異的な技術力を結集したコブラジェット2200は、4分の1マイル(約402メートル)を6.87秒で走破し、時速221マイル(約355km/h)を記録した。これにより、世界最速のEVとしてギネス記録に認定された。参考までに、2025年に発表されたリマック・ネヴェラR(2107馬力)の4分の1マイル記録は7.9秒であった。なお、ネヴェラRは市販車だが、コブラジェット2200はドラッグレース専用のワンモデルであり、市販化の予定はない。
フォードは、今回のプロジェクトで得られた知見を今後発売される電気自動車に活かしていくとしている。