2023年、米連邦最高裁は、妊娠中絶薬ミフェプリストン(商品名:メフィーゴ、RU-486)のFDA(米食品医薬品局)による承認を無効化する判決を差し止めた。同薬は、ミソプロストールとの併用で妊娠中絶に用いられる。同年、米第五巡回区控訴裁判所は、一部の判決を差し止めつつも、ミフェプリストンの流通制限に関する部分は維持していた。

それから1年後の2024年、最高裁は「FDA v. Alliance for Hippocratic Medicine」事件で、原告側に憲法上の争訟適格(Article III standing)がないとして審理を棄却。しかし、ルイジアナ州が起こした新たな訴訟「ルイジアナ州 v. FDA」では、第五巡回区控訴裁判所が再び動きを見せた。同裁判所は、FDAが2023年に導入した「遠隔診療によるミフェプリストン処方」規制を一時停止する判断を下した。

ルイジアナ州の主張と裁判所の判断

第五巡回区控訴裁判所は、ルイジアナ州の主張を「強く支持される可能性が高い」と判断し、規制の一時停止を命じた。同州は、以下の2点を根拠に「原告適格」を主張していた。

  • 州主権の侵害(主権的損害):FDAの遠隔処方規則により、ルイジアナ州の妊娠中絶規制を回避しやすくなり、州主権が侵害された。
  • 医療費負担(財政的損害):他州で処方されたミフェプリストンによる合併症治療で、ルイジアナ州が医療費を負担している。

しかし、専門家らはこれらの主張について、法的根拠が薄弱だと指摘する。特に州主権の侵害については、連邦法が州法を無効化するケースとは異なり、単に「他州の規制が緩いことでルイジアナ州の規制が回避されやすくなった」という主張は、最高裁の判例(United States v. Texas)に反するとの見方が強い。

法的議論の行方と今後の影響

ルイジアナ州の主張が認められれば、他州も同様の理屈で連邦政府や他州を相手取った訴訟を起こす口実となりかねない。例えば、カリフォルニア州がテキサス州や連邦政府を相手取って「規制が緩い銃やスーダフェドラ製品の流入により治安が悪化した」と主張するような事態も想定される。

また、医療費負担についても、ルイジアナ州が具体的に「FDAの規制が原因で自州の医療費が増加した」と立証できなければ、原告適格を満たさない可能性が高い。現在の訴訟では、同州が提示した2件の合併症事例が直接的な因果関係を示せておらず、立証責任の重さが問われそうだ。

今後、最高裁が再び審理に加わるのか、あるいは第五巡回区控訴裁判所の判断が確定するのか、注目が集まる。

出典: Reason