米国の絶滅危惧種法(ESA)は、1973年の成立以来50年以上にわたり、ハクトウワシやカリフォルニアコンドルなど絶滅の危機に瀕した野生生物の保護に大きな役割を果たしてきた。同法が上院で全会一致の92-0で可決された当時、ハクトウワシの営巣ペアはわずか450組以下にまで減少していた。しかし現在では30万個体以上に回復し、2026年にはミズーリ州セントルイスの人口を上回る規模に成長している。
2018年の調査によると、ESAへの支持は過去20年にわたり安定しており、反対する米国人は1割に満たない。にもかかわらず、同法は産業界から長年にわたり批判の対象となってきた。特に開発制限が経済成長の阻害要因とみなされ、2011年に共和党が下院を掌握して以降、ESA改正を目指す法案が毎年40件前後提出されるようになった。
「多くの環境法は21世紀に対応しておらず、現代化が必要だ」と、保守系シンクタンク「Independent Women’s Forum」のエネルギー・保全センター長、ガブリエラ・ホフマン氏は語る。「ESAの現行制度に批判的な者であっても、法の機能向上が必要だと考えている」
一方で、ESAがクリーンエネルギー開発の阻害要因となっているとの指摘もある。しかし環境団体「Earthjustice」の北西地区担当責任者、クリステン・ボイルズ氏はこう反論する。「ESAとクリーンエネルギーの対立は、ほとんどの場合、回避可能な問題だ。実際には、同法が生態系とエネルギー開発の双方を尊重するプロセスを確保している」
トランプ政権下で行われた規制緩和とバイデン政権の対応
2019年、トランプ政権はESAに40年ぶりの大幅改正を実施した。主な変更点は以下の通りだ。
- 「脅威にさらされている種」の保護基準を緩和
- 絶滅危惧種のリストからの除外手続きを迅速化
- 経済的損失(失われた収入など)を保護の判断材料に加算
バイデン大統領は就任後、これらの一部を撤回したが、他の規制は存続していた。しかし先月、連邦判事がESAと国家環境政策法(NEPA)に違反しているとして、これらの規制を無効とする判決を下した。
共和党、再びESA改正に動く
2024年、共和党は再びESAの規制緩和を目指す法案を提出した。特に注目されるのが「H.R.1897」だ。同法案は、トランプ政権下で行われた規制変更を法制化する内容を含んでおり、保護対象の見直しや経済的影響の重視など、産業界の要望を反映した内容となっている。
しかし、同法案は5月8日の本会議上程直前に審議が延期された。関係者によると、実務上の課題や党派間の調整が難航しているとされる。
専門家の見解:保護と開発のバランスをどう取るか
「ESAは生態系と人間活動の両立を図るための重要な枠組みだ。しかし、時代に合わせた柔軟な運用が求められている」
—— ガブリエラ・ホフマン(Independent Women’s Forum)
「多くの場合、種の保護とクリーンエネルギー開発の対立は、解決可能な問題だ。双方のバランスを取るプロセスが重要だ」
—— クリステン・ボイルズ(Earthjustice)
今後、ESAを巡る議論はさらに激化するとみられ、環境保護団体と産業界の対立が深まる可能性がある。