米メイン州オーガスタの教育委員会(Augusta Board of Education)が公聴会における発言に対し「ゴシップ」「侮辱的言語」「下品な言葉遣い」「学校職員や特定の生徒に関する不満や申し立て」などを禁止していた規則が、表現の自由(第一修正)を侵害する可能性が高いと、同州連邦地裁のステイシー・ノイマン判事が2025年7月22日に判断した。
この訴訟「Blanchard v. Augusta Bd. of Ed.」では、双方が公聴会を「限定公開フォーラム(limited public forum)」と位置付けていた。政府が特定の話題に限定して開放した公の場では、発言規制は「見解中立(viewpoint-neutral)」かつ「合理的」でなければならない。しかし、判事は、規則で禁止されていた4つの項目がいずれもこの基準を満たしていないと結論付けた。
「ゴシップ」規制の問題点
判決文によると、「ゴシップ」の定義は「他人の行動や私生活に関するうわさや情報」とされており、学校や教育に関連する発言に限定されていない。例えば、教師や管理職、教育委員の行動や私生活に関する発言であっても、学校運営や政策に直接関わる場合がある。しかし、規則には「ゴシップ」を客観的に判断する基準がなく、担当者の主観に委ねられていた。これにより、恣意的な運用や見解差別につながるリスクが指摘された。
また、「ゴシップ」の定義は幅広く、例えば「子どもの教育に関わる教師の行動についての親の発言」や「政策・予算に関わる管理職の行動についての市民の発言」など、保護されるべき批判的発言まで含まれかねない。判事は、こうした発言を広く「ゴシップ」とみなす規則は、第一修正で保護される批判を沈黙させる恐れがあると指摘した。
「侮辱的言語」規制の見解差別性
「侮辱的言語」についても、メリアム=ウェブスター辞典では「厳しく攻撃的な」「侮辱的な言葉遣い」と定義されており、2025年7月の公聴会では議長が「特定の人に害や不快感を与える言葉」と説明していた。これは、特定の意見を排除する「見解差別」に該当すると判事は指摘した。米国最高裁の「Matal v. Tam」判決(2017年)でも同様の見解が示されており、判事は他の教育委員会の規則をめぐる裁判でも同様の結論が出ていると述べた。
一方で、判事は教育委員会がすべての侮辱的発言を規制する権限がないわけではないと認めた。例えば、実際の混乱を招く行為や大声での発言、脅迫、真のハラスメントなど、見解中立で具体的に定義された行為に限定すれば、規制は可能だと示唆した。
今後の影響と教育委員会の対応
判決は、教育委員会が公聴会の発言規則を見直す必要性を示唆しており、特に「ゴシップ」や「侮辱的言語」といった曖昧な定義の規制は、憲法違反のリスクが高いと結論付けた。今後、各地の教育委員会が同様の規則を見直す可能性がある。
専門家は、この判決が米国における公教育の透明性と市民の発言の自由のバランスを再考するきっかけになると指摘している。