バッファロー大学准教授で、かつてエネルギー省化石エネルギー・炭素管理局の幹部を務めた経歴を持つホリー・ジーン・バック氏が、先週発表した論考をきっかけに、データセンター立地をめぐる議論に一石を投じた。

同氏は米誌Jacobinに寄稿した論文で、AIデータセンターの一時停止(モラトリアム)を求める動きを「左派にとっての戦略的大失敗」と呼び、環境・気候活動家が長期的な目標を共有しない左派と右派の連合に依存する危険性を指摘した。

データセンター規制は「低品質ポピュリズム」なのか?

バック氏の主張は、データセンター規制をめぐる議論の中で賛否両論を巻き起こした。同氏は、米議員らが提案したAIデータセンター・モラトリアム法案について「文面上は優れた表現だが、政策としては有効でない」との見解を示す一方で、規制推進派が「社会的許認可を奪う交渉戦術」と位置づけている点を理解しつつも、自身はその効果に懐疑的だと明かした。

スロップリズム(低品質ポピュリズム)と呼ぶかどうかは分からない」としつつも、バック氏は「規制推進派は感情的な満足やエリートへの反発に焦点を当てたパフォーマティブな政策ではなく、実質的な成果を目指している」と説明。その上で、モラトリアムが「交渉の切り札」として機能する可能性を否定はしないものの、長期的な効果には疑問を呈した。

左派と右派の連合は機能するのか?

バック氏は、データセンター規制をめぐる左派・右派の連合が抱える根本的な問題点を指摘する。同氏によれば、データセンターの停止が必ずしもクリーンエネルギーの拡大や雇用転換への社会政策につながるわけではなく、むしろ両派の利害が一致しない中で、規制が頓挫するリスクが高いという。

「左派と右派が協力してデータセンター規制を求める動きは、短期的には注目を集めるかもしれないが、長期的なビジョンや政策の整合性が欠如している」とバック氏は述べ、規制推進派が目指す「社会的正義」と現実の政策効果との乖離を強調した。

専門家間でも意見が分かれるデータセンター規制

バック氏の論考は、データセンター規制を支持するマシュー・イグレシアスのような経済成長派からは称賛された一方、ベン・インスキープ(インディアナ州市民行動連合)のような反データセンター運動のリーダーからは批判を浴びた。同氏は、自身の主張を巡る議論の行方について「政策の有効性を冷静に議論することが重要だ」と強調した。

データセンターをめぐる議論は、環境保護と経済成長のバランスをどう取るかという、現代社会の重要な課題の一つとなっている。