ニューヨークで休暇中に祖国で内戦が勃発したと想像してほしい。政権に反対する人々や、偶然戦火に巻き込まれた一般市民が次々と命を奪われている。そんな中、米国の観光ビザが間もなく失効する。帰国すれば死が待っている──。そんな状況に置かれた外国人に対し、米国は「一時的保護資格(TPS)」という救済策を提供してきた。

TPSは1990年の法律に基づき、母国で「武力紛争」「自然災害」「その他の大規模な危機」が発生した外国人に対し、米国内滞在と就労を認める制度だ。当初は「延長自主帰国計画」と呼ばれる暫定措置が取られていたが、1990年に法制化され、対象国の選定基準が明確化された。対象者は定期的な登録が義務付けられ、重罪や複数の軽罪歴、麻薬取引やテロリズムとの関与があれば資格を失う。また、TPSは「一時的」な措置であり、危機が収束すれば対象国から除外される仕組みだ。

トランプ政権によるTPS打ち切りの波紋

しかし、トランプ前政権は移民政策の厳格化の一環としてTPSに敵対的な姿勢を示した。2025年の再登板直後、トランプ大統領は「米国民を侵略から守る」と銘打った大統領令に署名。閣僚に対し、TPSの指定を「法律の要件を満たす最小限の期間に限定せよ」と命じた。これを受け、政権は見直し対象だった13カ国すべてのTPS指定を打ち切った。中には期限前の打ち切りも含まれ、対象国はイエメン、ソマリア、エチオピア、ハイチ、ミャンマー、南スーダン、シリア、ベネズエラ、ホンジュラス、ニカラグア、ネパール、カメルーン、アフガニスタンに及ぶ。

最高裁が問う:TPS打ち切りの合法性

この強硬措置を巡り、最高裁で二つの重要な訴訟が審理されている。一つは「Mullin v. Doe」で、シリアのTPS打ち切りの合法性が争われている。シリアは2024年に大統領が追放された内戦状態にあり、依然として不安定な情勢が続いている。もう一つは「Trump v. Miot」で、ハイチのTPS打ち切りが焦点だ。ハイチは政府の機能不全と犯罪組織の支配拡大により、国全体が危険にさらされている。

両訴訟とも4月に口頭弁論が行われる予定で、TPS制度の今後を左右する判断が下される可能性がある。TPS保持者らは、帰国すれば命の危険に直面するとして、政権の判断に異議を唱えている。

TPS制度は、人道的な観点から生まれた救済策だが、政治的な思惑が交錯する中でその存続が問われている。最高裁の判断が待たれる。

出典: Vox