2025年の米国におけるUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)の突然の廃止が、アフリカ全土で暴力的な紛争の急増と関連していることが、科学誌「Science」に掲載された最新の研究で明らかになった。
ドナルド・トランプ前大統領の2期目開始直後、米国政府はUSAIDの解体を急速に進めた。同庁はそれまで世界最大の国家人道支援機関であり、2025年2月にエルン・マスク氏が率いる政府効率化部門が「機関を粉砕した」と発表していた。
廃止が招いた76万2千人の死者、2030年までに900万人超に
研究によると、USAIDの廃止により2025年までに76万2千人(うち50万人が5歳未満の子ども)の予防可能な死者が発生したと推定されている。さらに、2030年までに900万人以上の死者が増加する可能性があるという。
新たな研究では、USAID廃止がアフリカの紛争発生率に与えた影響について、初めての証拠が報告されている。研究チームは「USAID廃止により、アフリカのサブナショナル行政単位約1,000カ所で暴力の発生確率、重大性、致死率が急速に上昇した」と指摘する。
USAID支援地域で紛争確率6.5%上昇
USAIDから最も多くの支援を受けていた地域では、廃止により紛争発生確率が6.5%上昇した。具体的な影響として、研究では以下の数値が示されている。
- 抗議行動や暴動の発生確率:10%増加
- 紛争イベント数:10.6%増加
- 戦闘回数:6.9%増加
- 戦闘関連死者数:9.3%増加
また、イベント分析により、廃止前の高支援地域と低支援地域の間で紛争傾向に差がなかったことも確認された。廃止の影響は非常に大きく、紛争イベント数は相対的に12.3%増加したという。
USAIDの廃止がもたらす複雑な影響
USAIDは1961年にジョン・F・ケネディ大統領によって設立され、廃止前の米国連邦支出の1%未満を占めるに過ぎなかった。同庁は2021年から2024年にかけて、約9,100万人の命を救ったと推定されている。
同庁の支援がコミュニティにもたらす影響は複雑で、状況によって異なる。資源の流入により暴力の機会費用が低下し、紛争が減少する「機会費用効果」がある一方で、資源の配分を巡る紛争を引き起こす「略奪効果」も存在する。しかし、USAIDの廃止は規模と速度において前例のないものであり、研究では「両方の悪影響が最悪の形で現れた」と結論付けている。
「USAID廃止により、暴力の発生確率、重大性、致死率が急速に上昇した。これは、支援が途絶えたことでコミュニティの脆弱性が高まったことを示している」
オースティン・L・ライト(シカゴ大学ハリス公共政策大学院准教授)