米国上院銀行委員会は5月14日に、暗号資産市場規制法案「CLARITY Act(Digital Asset Market Clarity Act)」の採決日程を発表した。同法案は米議会で審議される最も重要な暗号資産関連法案と位置付けられており、銀行業界や民主党議員による反対で審議が遅れていたが、今週中に委員会通過を目指す。
採決は5月14日午前10時30分、ワシントンD.C.のディルクセン上院議員ビル538号室で実施される。委員会メンバーは修正案を審議し、法案を本会議に上程するか否かを採決する。委員長のティム・スコット議員(共和党・サウスカロライナ州)は先週、採決日程を確認したと発表。また、議事の模様はライブ配信される予定だ。
法案の概要と経緯
CLARITY Act(H.R. 3633)は2025年7月17日に下院で可決された。賛成294票、反対134票で、全216人の共和党議員が支持し、民主党議員78人が賛成に回った。しかし、上院では審議が停滞。これまで2度の採決延期やステーブルコイン規制を巡る交渉が行われ、暗号資産業界と伝統的銀行業界のロビー活動が激化していた。
同法案の最大のポイントは、米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の規制権限を明確に分離することだ。これまで暗号資産が「有価証券」か「商品」かについて長年争われてきたが、同法案により、CFTCが「デジタル商品」に関する現物・現金市場の独占的な規制権限を持つ。一方、SECは投資契約資産や一次市場の資金調達に関する規制を維持する。ステーブルコインは別枠として共同規制の対象となる。
上院版法案の拡充内容
上院版の法案は下院版より大幅に拡充され、全9編で構成される。主な追加項目は以下の通りだ。
- 分散型金融(DeFi)の保護規定:DeFiプロトコルの運営者や利用者を対象とした規制枠組みを整備。
- 不正資金流用対策:暗号資産を悪用した資金洗浄やテロ資金供与の防止策を強化。
- 暗号資産顧客の破産保護:暗号資産取引所やウォレットサービスの顧客資産を保護するための破産手続きを明確化。
- Blockchain Regulatory Certainty Act:ソフトウェア開発者に対し、ブロックチェーン関連技術の開発・提供に関する規制免責を与える。
採決日程の圧迫と政治的駆け引き
5月14日の採決は、上院銀行委員会にとって初の正式な委員会採決となる。スコット委員長は当初、2025年9月に本会議での採決を目指していたが、その後2025年末へと延期。さらに先月には、フォックス・ビジネスのインタビューで「2026年6月か7月までに本会議に上程したい」と発言していた。
しかし、カレンダーの制約は厳しい。5月21日のメモリアルデー休会前に委員会を通過できなければ、審議プロセスは再スタートしなければならない。ルミス議員(共和党・ワイオミング州)とモレノ議員(共和党・オハイオ州)は、メモリアルデー前に法案が通過しなければ、次回の実現可能な立法機会は2030年以降になる可能性があると警告している。
ホワイトハウスは7月4日までに大統領の署名を目指す方針を示している。
民主党議員の反発と業界の動向
同法案はトランプ政権内の有力者からも支持を受けている。SECのポール・アトキンス委員長は議会に対し、法案の早期成立を求める発言を行った。一方で、民主党議員の中には法案の修正や撤回を求める動きが強まっている。
銀行業界は、暗号資産が銀行システムに与えるリスクを懸念し、規制強化を主張。暗号資産業界は、過剰な規制がイノベーションを阻害すると反発している。両者の攻防は、今後数週間でさらに激化する見込みだ。
「CLARITY Actは暗号資産業界にとって歴史的な転機となる。規制の明確化は投資家保護と市場の安定性を両立させるために不可欠だ」
– 暗号資産業界関係者
今後、上院銀行委員会での採決を経て、本会議での審議が進む見通しだが、民主党議員や銀行業界の反対により、法案の行方は不透明だ。暗号資産業界と規制当局の攻防は、引き続き注目を集めるだろう。