米国のテロ対策当局にとって、2025年3月は「ストレステスト」のような月となった。同月初めには、イラン国旗のシャツを着た男がテキサス州のバーで3人を射殺。続いてニューヨーク市長官邸前で爆発物を使用した攻撃が発生。さらに3月12日にはバージニア州の大学キャンパスで銃撃事件が発生し、同日午後にはミシガン州のシナゴーグで車が突っ込む事件も起きた。数日後には、オハイオ州のモスクを狙った大量射殺を計画していた容疑者が逮捕された。

現在および元の国家安全保障当局者らは、これらの事件を「悪い兆し」と捉えている。彼らは昨年、トランプ大統領が移民排除政策に反テロ資源を振り向けた際に、大規模な国際事件が発生した場合の対応能力低下を予測していた。そして今、イランとの戦争が勃発し、米国の安全保障機関は専門知識と指導力を失い、テロ対策の「国家戦略」は未だに発表されていない。

「国家戦略」の遅れと専門家不足

この状況が注目を集めているのが、セバスチャン・ゴルカ氏だ。ホワイトハウスのテロ対策顧問であり、国内外のテロ脅威に対抗するための青写りを策定する役割を担っている。ゴルカ氏は昨年、国家テロ対策戦略が「間もなく発表される」と発言。7月には「目前に迫っている」と述べ、10月には再び同様の発言をした。1月には再度「近日公開される」と発表したが、いまだに戦略は公表されていない。

現職および元のテロ対策関係者らは、ゴルカ氏が最終的に発表する戦略は「情報に基づくものではなく、政治的な文書」になると予想している。また、国家安全保障機関で1年にわたって行われた大規模な人員削減を踏まえると、具体的な対策の詳細が不足している可能性が高いという。

「戦略の価値は、そこに投入されるリソースの量で決まる。我々は非常に危険な領域に足を踏み入れつつある」

— 元上級幹部(トランプ政権1期目在任)

ゴルカ氏の波乱の経歴と政権の変化

ゴルカ氏の経歴は、ワシントンの保守的な防衛機関に「侵入者」としての波乱に満ちたものだ。短気で知られ、威勢の良い発言と英国訛りの大声で知られる彼は、しばしば大げさな表現を用いる。複数の党派を超えた20人以上の国家安全保障専門家にインタビューを行ったところ、ゴルカ氏の台頭は、トランプ政権2期目のテロ対策アジェンダの驚くべき変化を物語っていることが明らかになった。当初はゴルカ氏の大言壮語に「目を回していた」関係者も、今では米国の主要な陰謀を特定し阻止する能力に対する不安を募らせている。

ゴルカ氏はトランプ政権1期目では7カ月で更迭された。当時のスタッフらは彼を「大人の集団」と呼んでいた穏健派に阻まれた。在任中、ゴルカ氏は機密資格の取得に苦労し、自身が否定するイスラム過激派との関係を巡る批判にさらされた。

専門家不足と指導力の空白

米国のテロ対策機関は、過去1年間で多くの専門家と指導者を失った。ゴルカ氏の戦略が遅れる中、テロ対策の現場では「手探りの状態」が続いている。元当局者らは、ゴルカ氏の戦略が発表されたとしても、具体的な実行計画やリソースの裏付けがなければ、単なる「机上の空論」に終わる可能性を懸念している。

「テロ対策は、単に文書を作成するだけでは機能しない。実行力とリソースが伴わなければ、絵に描いた餅だ」と、元国家安全保障当局者は語る。

出典: ProPublica