米国の原子力産業:民間主導が招く安全リスク
米国の原子力産業は、世界でも類を見ないほど民間主導で運営されている。多くの国が原子力事業を政府主導で行う中、中国は国有企業が原子炉を運営し、フランスは2023年に主要原子力企業を再国有化した。一方、米国では原子炉のほとんどが民間企業の手に委ねられている。
安全団体への加盟拒否が浮き彫りにする問題
米国の原子力産業は、利益追求を優先するあまり、安全性が軽視される傾向にある。特に、新興原子力企業の多くは、業界の安全団体である原子力運転協会(INPO)への加盟を拒否していることが、E&E Newsの調査で明らかになった。
INPOは1979年のスリーマイル島原発事故を受けて設立された非営利団体で、原子力発電所の検査や運営ガイドラインの共有、人材育成を担う業界団体だ。加盟は任意だが、これまで全ての原子力事業者が参加していた。しかし、データセンター需要の高まりで台頭した9つの新興企業のうち、加盟を表明したのはわずか1社だった。
利益優先が招く安全軽視
新興企業がINPOへの加盟を拒否する背景には、利益追求の圧力がある。元米原子力規制委員会(NRC)委員のスコット・モリス氏は、こう指摘する。
「これらの企業はビジネスであり、利益を追求しています。利益に直接貢献しないインフラは、常に見直しの対象となります」
規制緩和が加速するリスク
さらに懸念されるのが、ドナルド・トランプ前政権による規制緩和だ。NRCは一部の規制権限をINPOに委譲し、運営や保守研修プログラムの管理を業界団体に任せるようになった。これにより、規制が事実上「任意」のものとなっている。
「NRCとINPOは重複するのではなく、補完的な関係にあります。しかし、規制権限の委譲は、安全基準の実効性を低下させる可能性があります」
(スコット・モリス氏)
原子力スタートアップの実態
INPOへの加盟を拒否している新興企業には、大量生産型原子炉を開発するAalo Atomicsや、小型原子炉を開発するAntares Nuclearなどが含まれる。これらの企業は、安全基準の遵守よりも、迅速な事業展開と利益獲得を優先していると見られている。
専門家が警告する将来のリスク
原子力産業の専門家らは、規制緩和と安全軽視が招く将来的なリスクについて警鐘を鳴らす。特に、新興企業の多くが実績のない技術を採用していることから、事故発生時の被害拡大が懸念されている。
米国の原子力産業は、今後も民間主導のまま運営される見通しだが、安全性の確保と利益追求のバランスをいかに取るかが課題となっている。