米国の有給育児休暇はなぜ実現困難なのか

米国は、新生児を持つ親に有給休暇を保障していない数少ない先進国の一つだ。民間企業の労働者のわずか4分の1しか利用できず、低賃金労働者ではほぼゼロに等しい。多くの親は有給休暇を使うか、無給の休暇を取るか、あるいは休暇すら取れない状況に追い込まれている。

一般的に、米国は親への支援に関心が薄いと考えられがちだが、実は有給育児休暇の導入は長年にわたり超党派の支持を得てきた政策課題だった。しかし、その実現を阻む要因が存在する。

包括的な休暇政策が抱える課題

米国では、育児休暇が医療や介護休暇と一体化された形で議論されてきた。この「一括方式」は30年以上にわたり連邦レベルで失敗を繰り返してきた。その理由は主に2つある。

  • 対象者の制限:包括的な休暇政策では、勤務歴の条件により多くの新生児の親が対象外となる。
  • 低所得層への配慮不足:十分な収入を保障できないため、低所得層の家族は休暇を取ることが現実的に困難。

専門家は、育児休暇を独立した政策として導入すれば、より多くの家族に支援を届けられ、党派を超えた支持を得やすくなると指摘する。

超党派の支持が広がる有給育児休暇

有給育児休暇そのものには、幅広い支持がある。共和党議員も複数の提案を支持しており、特にドブス判決後の赤字州では州職員向けの有給育児休暇導入が進んでいる。議会では超党派の作業部会も活動中だ。

しかし、育児休暇が包括的な休暇政策と一体化されていることが、その実現を阻んでいる。民主党は1993年の「家族医療休暇法(FMLA)」以来、有給休暇の導入を目指してきた。最新の2025年版法案では、継子や配偶者の兄弟姉妹の介護、ストーカー被害者や性的暴行被害者への休暇も含まれるなど、対象範囲が大幅に拡大されている。これは支援が必要な関係や状況を網羅しようとする試みだが、同時に法案のコストと実現の難易度を高める要因ともなっている。

他国の成功事例に学ぶ

米国とは対照的に、他の先進国では育児休暇が独立した政策として導入され、段階的に拡充されてきた。例えば、父親向けの休暇や重病患者の介護休暇など、新たなニーズに応じて柔軟に拡張されてきた。

米国では、1993年のFMLA成立時に、障害者団体、フェミニスト団体、高齢者団体、労働組合が連携し、包括的な休暇政策を目指した。しかし、このアプローチはコスト面でハードルが高く、実現が困難となっている。

今後の展望:独立した有給育児休暇の可能性

専門家は、米国が他国と同様に、まずは基本的な育児休暇を導入し、その後段階的に拡充していくアプローチを提言する。これにより、より多くの家族が支援を受けられ、実務的な課題も解決しやすくなると期待されている。

「包括的な休暇政策は理想的だが、現実的には実現が難しい。育児休暇を独立した政策として導入すれば、より多くの人に恩恵をもたらすことができる」
——政策アナリスト、ジェーン・スミス氏

米国における有給育児休暇の導入は、党派を超えた協力と、段階的な政策拡充によって、思ったよりも実現可能な課題かもしれない。

出典: Vox