ラスセン国立森林の現状:かつての豊かさが消えた光景
カリフォルニア州北東部、製材所の町チェスターから車で約10分、私が10年ほど前に購入して修復した古い狩猟小屋から30分ほどの場所。古いトヨタ・タコマを走らせ、でこぼこした土の道を進むと、ラスセン国立森林が民間の伐採地へと変わる場所にたどり着く。助手席には鋭い目をしたボーダー・コリーのリリーが乗っている。
7年前、この場所を訪れた時、リリーはトラックから飛び出し、膝丈の草原を横切ってウサギを追いかけ、泥とひっつき虫だらけで帰ってきた。当時の風景は、L.L.Beanのカタログから飛び出してきたかのようだった。花が咲き乱れ、ハチがブンブンと飛び回る草原。そこにそびえる巨大な樹木たちは、グレイウルフや太平洋フィッシャー、オオタカなどの希少種を支えていた。カリフォルニア州で最も希少な哺乳類の一つであるシエラネバダレッドギツネも、この広大な私有地と公有地のパッチワークの中で生息していた。
このラスセンの地は、ストレスを忘れ、野生のキノコを採る私の癒しの場所だった。しかし今回、かつての草原は見渡す限りの日焼けした不毛の大地と化していた。目に入るのは、火山岩の小山と、まだ活動中のラスセン峰の姿だけ。鳥の声も、動物の気配も、虫の音もない。巨木は消え、わずかに人の背丈ほどの火山岩の山が点在するのみだ。2021年7月に発生したディクシー火災は約40万ヘクタールを焼き尽くし、3年後の2024年にはパーク火災がさらに17万ヘクタールを焼失させた。しかし、目の前の光景は火災の直接的な影響ではない。人の手によって引き起こされたものだ。
わずか数分の距離に広がる「生と死」のコントラスト
この場所から数分の車程の先では、自然が見事に回復していた。そこには緑に覆われた山白檀の低木や、ウサギブッシュ、紫がかったアザミが群生し、エネルギッシュなハチが花から花へと飛び回っていた。巨木は失われたが、新しい苗木がそこかしこに芽吹き、高さ60センチほどのスギ、マツ、モミの苗が無秩序に生い茂っていた。
しかし、目の前の民間伐採地では、そんな緑の再生は見られない。ハチの姿も花の咲く様子もなく、まるで死の世界だ。そこには人の手によって植えられた、背の低い密集した針葉樹の苗木が列をなしていた。高さは30センチにも満たない。その理由は、ほとんどの人が知らない事実にある。伐採会社と米国林野局(USFS)が、カリフォルニア州全域の伐採跡地や山火事跡地に大量の除草剤を散布しているのだ。しかも、その除草剤とはグリホサート、つまり「ラウンドアップ」として知られる強力な除草剤なのである。
「ラウンドアップ」がもたらす生態系への深刻な影響
このかつての楽園は、カリフォルニア州で最も除草剤が散布される森林地帯の一つであり、ハリウッド映画「ワイルド」で有名になった太平洋稜線トレイル(PCT)が通っている。しかし、化学物質の影響で、ディクシー火災から5年近く経った今も、この地は月面のような荒涼とした光景が広がっている。リリーをトラックに残し、グリホサートが散布された焼失地帯に足を踏み入れると、そこには数年経っても生命の気配はなかった。
米国農務省によると、2021年のグリホサートの使用量は約12万トンに上り、そのうちの大部分が農地ではなく、森林や公園、鉄道沿線などで使用されている。特にカリフォルニア州では、2010年から2020年にかけて、森林におけるグリホサートの使用量が60%増加した。その背景には、伐採後の再植林を促進するための下刈りの効率化や、山火事後の「管理」という名のもとでの除草剤使用がある。
伐採業者と林野局の主張:効率化 vs 環境破壊
伐採業者や林野局は、グリホサートの散布が「効率的な再植林」と「侵略的外来種の抑制」につながると主張する。しかし、環境保護団体はこれに強く反発している。グリホサートは人体への健康リスクが指摘されており、世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)は2015年に「おそらく発がん性がある」と分類している。また、土壌微生物や水生生物への悪影響も報告されている。
さらに、グリホサートが散布された地域では、植物の多様性が著しく低下し、それに伴い昆虫や鳥類、哺乳類などの生息地が失われている。カリフォルニア大学バークレー校の生態学者は、「グリホサートの散布は、森林の生態系を単純化し、生物多様性を奪うだけでなく、長期的な炭素蓄積能力を低下させる」と警鐘を鳴らす。
代替策はあるのか?
グリホサートに代わる除草方法として、機械的除草や放牧、マルチングなどが提案されている。しかし、伐採業者にとってはコストや労力の面で現実的な選択肢とは言えず、林野局も「効率性」を重視するあまり、代替策の導入に消極的な姿勢を崩していない。
環境保護団体「Earthjustice」の弁護士は、「グリホサートの使用は、米国の森林政策の根本的な見直しを迫る問題だ。私たちは、化学物質に依存するのではなく、自然の回復力を活かした持続可能な森林管理を目指すべきだ」と訴える。
未来への警鐘:私たちにできること
ラスセン国立森林の現状は、米国全土の森林で起きている問題の一端に過ぎない。グリホサートの大量散布は、生態系の崩壊だけでなく、人間の健康や気候変動にも悪影響を及ぼす可能性がある。私たち一人一人がこの問題に目を向け、声を上げることが重要だ。
消費者としては、グリホサート不使用を謳う製品を選択することで、メーカーに圧力をかけることができる。また、地元の議員や環境団体に声を届け、政策の転換を求めることも大切だ。森林は、私たちの未来にとってかけがえのない資源である。その保護と持続可能な管理を実現するために、今すぐ行動を起こす時だ。