米国の関税政策が自動車市場を直撃

米国で手頃な価格の新車がますます手に入りにくくなる可能性が高まっている。北米の貿易ルールが弱体化したり、関税が維持されたりすれば、低価格車が市場から消滅する恐れがあると、自動車メーカーがトランプ政権に警告していることが、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道で明らかになった。

米国の新車販売台数のうち、昨年12月末時点で3万ドル未満の車はわずか7%にとどまっていた。平均新車価格は5万ドルを超え、手頃な価格の車を求める消費者にとって状況は厳しさを増している。

主要メーカーがエントリーモデルから撤退

米国の自動車メーカーは数年前からトラックやSUVへのシフトを進めており、トヨタ、ホンダ、日産、ヒュンダイなどの外資系メーカーが低価格車の供給を担ってきた。しかし、利益率の低さから、日産は今年限りで「ヴァーサ」の生産を終了するなど、各社がコスト削減に追われている。

トヨタの「カローラ」、ホンダの「シビック」、日産の「セントラ」などのモデルは、部品が米国、カナダ、メキシコをまたいで供給されるサプライチェーンに依存している。完成車が販売されるまでに部品が複数回国境を越えるこのシステムは、北米自由貿易協定(USMCA)に基づく関税撤廃の枠組みがあってこそ成り立っていた。

関税が製造コストを押し上げ

現在の米国の政策では、米国外の部品に対して追加のコストが課せられ、鋼材やアルミニウムの関税も製造コストを押し上げている。特に利益率の薄いエントリーモデルにとっては大きな負担だ。WSJによると、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の代替策や延長がなければ、一部の低価格車の生産が採算に合わなくなり、メーカーが撤退を検討する可能性があるという。

消費者への影響は深刻

低価格車が市場から消えれば、新車購入へのハードルが一層高くなり、将来的に高級車へのステップアップも難しくなる。また、国内生産の促進を目指す政策が、逆に手頃な価格の車へのアクセスを制限し、結果的に地元の生産活動にも悪影響を及ぼす可能性がある。

投資の停滞も懸念

新工場の建設や既存工場の改修には数十億ドルが必要だが、貿易ルールの行方が不透明なため、多くの経営陣が投資を先送りしている。カナダとメキシコは関税の軽減を求めているが、一部の関税は維持される可能性が高いと関係者は見ている。

「手頃な価格の車がなくなれば、新車市場への参入が難しくなり、消費者の選択肢はさらに狭まる。政策が意図しない結果を招く可能性がある」
—— 自動車業界関係者

出典: CarScoops