米国ニューヨーク発 — 米国際貿易裁判所は11日、トランプ前大統領が導入した第122条に基づく10%一律関税を違憲とする判決を下した。同関税は世界各国からの幅広い輸入品に適用され、米国の貿易赤字解消を目的とした政策だったが、裁判所はその法的根拠の不備を厳しく指摘した。
今回の判決は、憲法上の権力分立原則を守る重要な司法判断として位置付けられている。米国際貿易裁判所は、2020年に発令された大統領布告(Proclamation 11012)に対し、2対1の多数決で違憲を宣告した。同布告は、米国の「国際収支赤字」を理由に、最大15%の関税を150日間にわたり課す権限を大統領に与えるものだった。
判決の法的根拠:第122条の解釈が争点に
第122条は、1974年の通商法に基づき、大統領に「国際収支赤字」への対応として一時的な関税を課す権限を付与している。しかし、裁判所は、同条文の「国際収支赤字」が、1974年当時の固定為替相場制(ブレトン・ウッズ体制)下で想定されていた特定の赤字を指すと明確に示した。
具体的には、当時の「国際収支赤字」とは、(1) 流動性不足、(2) 公的決済不足、(3) 基本的収支不足の3つのいずれかを指すと解釈されていた。これに対し、トランプ政権は「経常収支赤字」や「貿易赤字」を根拠に関税を課すことを主張したが、裁判所はこれを認めなかった。
「第122条は、1973年まで続いた固定為替相場制下で生じた特定の不均衡を対象としている。経常収支赤字はその対象外であり、大統領の広範な裁量権を認める解釈は憲法違反のおそれがある」
— 米国際貿易裁判所判決文より
訴訟の背景と争点
今回の判決は、2件の訴訟が合同で審理された。1件はリバティ・ジャスティス・センターが2社の輸入業者を代理して起こしたもので、同団体は過去にIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づくトランプ政権の関税を無効とした最高裁判決にも関与していた。もう1件はオレゴン州を中心とする24州の州政府による集団訴訟だった。
原告側は、第122条の発動要件である「国際収支赤字」が存在しないにもかかわらず、大統領が関税を課すことは憲法違反だと主張。これに対し、政府側は大統領に広範な裁量権があると反論したが、裁判所はこれを退けた。
今後の影響と憲法上の問題
今回の判決は、大統領の関税発動権限に対する司法のチェック機能を強化するものだ。専門家らは、今後同様の関税政策が提案される際には、第122条の解釈が厳格に審査される可能性が高いと指摘している。
また、憲法上の「権力分立原則」に抵触する可能性が指摘された点も注目される。裁判所は、大統領に無制限の裁量権を与える解釈は「憲法上の権限委譲問題(nondelegation problem)」に該当すると明言した。
同裁判所の判決は直ちに発効し、第122条に基づく関税の適用は停止される。政府側は控訴する可能性があるが、今後の行方が注目される。