米国の保守系ニュースサイト「ザ・ブレイズ」が2023年11月に掲載した記事が、連邦捜査局(FBI)による過剰な捜査を招いたとされる。同記事は「歩行分析」という手法に基づき、元議会警察官のShauni Kerkhoff氏を1月6日の議会襲撃事件における爆弾犯と断定していた。

同記事の発表直後、FBIはKerkhoff氏の自宅に爆発物探知犬や戦術装備の隊員、ヘリコプターを動員した大規模な家宅捜索を実施。しかし、この捜索は根拠薄弱な報道に基づくものであり、Kerkhoff氏は自身の名誉を傷つけられたとしてFBIを提訴した。

元警官がFBIを提訴:過剰捜査の実態

Kerkhoff氏は元議会警察官で、1月6日の襲撃事件では議会を防衛した功績があり、その後の裁判でも証言を行っていた。しかし、ザ・ブレイズの記事により、FBIはKerkhoff氏を爆弾犯の疑いがあると判断。同記事の発表2日前からFBI捜査官がKerkhoff氏の職場を訪れ、オンライン上のうわさについて尋問していたという。

Kerkhoff氏はCIAでの勤務中にFBI捜査官から「爆弾に関するオンラインのうわさ」について聞かれ、自宅の捜索許可を求められた。しかし、Kerkhoff氏らは同意せず、自宅で捜査官と面会することに同意した。

その後、Kerkhoff氏が自宅に到着すると、多数のFBI車両が到着。爆発物処理車やヘリコプター、全身防護服を着た捜査官が銃を構え、家の中を捜索したとされる。爆発物探知犬が家の中をくまなく調べ、引き出しの中身が放り出されるなど、荒っぽい捜索が行われたという。

「突然、Kerkhoff氏は捜査官たちが靴を探しているだけではないことに気づいた」と訴状には記されている。

ザ・ブレイズの報道と政府内の混乱

ザ・ブレイズの記者Steve Baker氏は、Kerkhoff氏の歩行パターンと爆弾犯のそれとが似ているという「分析」に基づき記事を執筆。同記事の発表前には、当時の国家情報長官 Tulsi Gabbard氏のスタッフに対し、この疑惑を伝えていたという。Gabbard氏のスタッフはKerkhoff氏を容疑者として特定するメモを作成していたと報じられている。

さらに、Baker氏はザ・ブレイズの創設者Glenn Beck氏がホストを務めるポッドキャスト番組で、自身の「分析」について言及。これにより、政府内でもKerkhoff氏が疑惑の対象となった可能性がある。

政府高官の関与と陰謀論の影響

この事件は、陰謀論が政府の公式行動に影響を与えた例としても注目されている。FBIがザ・ブレイズの報道を鵜呑みにし、過剰な捜査に踏み切った背景には、政府高官の関与も指摘されている。Kerkhoff氏の提訴は、政府の捜査がいかに根拠の薄い情報に基づいて行われることがあるのかを浮き彫りにしている。

Kerkhoff氏の弁護士は、この捜査が「法の支配を侵害するものであり、無実の市民に対する重大な人権侵害」であると主張。FBIの行動がいかに不当であったかを訴えている。