FBI長官のカシュ・パテル氏は10月7日、米首都ワシントンの連邦地裁に対し、「ジ・アトランティック」誌を相手取り、2億5000万ドルの名誉毀損訴訟を提起した。同誌が先週発表した記事で、パテル氏の過剰飲酒やFBIの管理不全が報じられたことを受け、同氏は「悪意に満ちた攻撃的な記事」と主張。同誌の報道は虚偽であり、名誉を傷つけられたとしている。
同誌の記事は、パテル氏がFBIの職を失う可能性を懸念しており、その理由の一つに「目撃者が語った過剰飲酒のエピソード」が含まれると伝えている。記事の執筆者であるサラ・フィッツパトリック記者も被告として名を連ねた。同誌によると、パテル氏の「顕著な酩酊状態」や「説明のつかない欠勤」がFBIおよび司法省の関係者を不安にさせ、匿名の当局者は「米国でテロ攻撃が起きた際の対応に不安を感じ、夜も眠れない」と語ったという。
一方で、ホワイトハウスは「パテル氏はトランプ前大統領の法と秩序政策の重要な担い手であり、犯罪率の低下に貢献した」と評価。パテル氏の反対勢力への厳しい姿勢もトランプ陣営から評価されていると伝えた。
パテル氏、匿名情報源への依存を批判
パテル氏の代理人は、同誌が「でっち上げの情報源」に依存していると主張。記事では20人以上の関係者に匿名を条件に取材を行ったとされているが、パテル氏側は「悪意ある虚偽の責任を逃れるための口実に過ぎない」と反論した。また、パテル氏側は同誌に対し、主張への反論機会を求めたが、同誌からの返答はなかったと訴状で指摘。「これは『実際の悪意』の強力な証拠だ」としている。
「ジ・アトランティック」誌の主張
同誌は、パテル氏がワシントンのプライベートクラブ「ネッドス」やラスベガスの「プードルルーム」で頻繁に過剰飲酒しているとの目撃情報を複数の関係者から得たと主張。6人の関係者は、パテル氏が前夜に飲酒したため、会議やブリーフィングが午後に延期されたと証言。また、複数回にわたり警備チームがパテル氏の起床に苦労し、一度は建物の強制開錠を要請したケースもあったとしている。
パテル氏、トランプ前大統領の戦略を踏襲
パテル氏の今回の訴訟は、トランプ前大統領が自身に不利な報道に対し取った戦略を踏襲したものだ。先週、フロリダ州の裁判官は、トランプ氏が「ジェフリー・エプスタイン容疑者に送った卑猥な誕生日メッセージ」を報じた「ウォールストリート・ジャーナル」紙に対し、100億ドルの名誉毀損訴訟を起こしたが、裁判官は「実際の悪意」の立証が不十分として却下した。昨年9月には、ニューヨーク・タイムズ紙と同紙の記者らを相手取った150億ドルの訴訟も同様に却下されている。
「パテル氏の訴訟は、トランプ前大統領の戦略を模倣したものだ。しかし、これまでの判例では、名誉毀損の立証には『実際の悪意』が必要とされており、パテル氏の主張が認められる可能性は低いとの見方もある。」