米東部ペンシルベニア州地区連邦地方裁判所のカイ・スコット判事は3月11日、バンス対ビジュアルテック・イノベーションズ社の訴訟において、弁護士ラジャン氏に対し厳しい制裁命令を下した。
同訴訟では原告側が中止された尋問の合理的な旅費を求めていたが、ラジャン氏はこれに対し包括的な制裁申立てを行い、旅費の支払いに異議を唱えた。原告側はこれに反論し、ラジャン氏が過去に「根拠のない判例や主張を支える資料を捏造していた」と指摘。今回も同様の行為があったと主張した。
判事は3月11日付の命令で、ラジャン氏に対し原告側の合理的な旅費全額の支払いを命じ、包括的な制裁申立てを却下。さらに、ラジャン氏に対し、自身の申立てにおける引用が「連邦民事訴訟規則第11条(b)」および裁判所のAI利用に関する内規に違反していないか説明を求めた。
ラジャン氏はこれに対し回答を提出したが、裁判所はその内容を「全く不合理」と厳しく批判した。ラジャン氏は「特定の状況下で合理的な弁護士であれば同様の行動を取っただろう」と主張したが、判事はこれを「法の解釈と倫理的責任の放棄」と断じた。
判事はさらに、ラジャン氏がAI生成文書を検証せずに提出し、その後の指摘に対し責任転嫁を繰り返したと指摘。時間的制約を理由にした主張についても、「裁判所に延長を求めることができたはず」と退けた。また、ラジャン氏が「人間による検証のみ」を求める内規の明確性を主張したが、判事はこれを「言い訳に過ぎない」と一蹴した。
ラジャン氏は、自身が通常弁護士業を営んでいないことを理由にミスを正当化したが、判事はこれを「職業倫理の放棄」と厳しく非難した。
AI利用のリスクと弁護士の責任
この判決は、AIツールを法廷文書作成に活用する弁護士に対し、引用の正確性を徹底的に検証する義務があることを改めて示した。特に、AIが生成した内容の真偽を確認せずに提出した場合、弁護士個人が直接的な責任を負う可能性が高いことが明確になった。
今後の法廷におけるAI利用に与える影響
- AI生成文書の利用は、引用の正確性を徹底的に検証した上で行う必要がある
- 弁護士は、AIツールの出力内容について最終的な責任を負う
- 裁判所は、AI利用に関する内規を厳格に適用し、違反行為に対し制裁を科す姿勢を示している
「弁護士は、提出する文書の内容について、その真実性と合法性を保証する義務がある。AIツールの利用は補助的なものであり、最終的な責任は人間が負うべきだ」
— カイ・スコット判事