米国食品医薬品局(FDA)は、性別違和を抱える未成年者に対し「適応外使用」の治療薬を処方する医療機関に対する調査を開始した。FDAは現在のところ、これらの薬剤が性別違和の治療に安全かつ有効であるかどうかを判断していない。

この調査は、テキサス北部地区連邦地裁(NDTX)における司法省の動きと連動している。2025年7月、司法省の副検事総長は、ローデアイランド病院(ブラウン大学ヘルス傘下)に対し、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)に基づくサブポエナを発行した。同病院が「誤った表示のある薬剤を患者に提供した」かどうかを調査するためだったが、病院側はこれに応じなかった。

2026年4月30日、司法省はNDTX地裁にサブポエナの執行を求める請願書を提出。同日、同地裁のオコーナー主任判事は政府の請願を認め、ローデアイランド病院に対し14日以内の全記録提出を命じた。これを受け、同病院は5月6日に第5巡回区控訴裁判所に控訴を申し立てると同時に、緊急差し止め命令の申立てを行った。

管轄権を巡る激しい攻防

ローデアイランド病院側は、NDTX地裁が管轄権を有していないと主張。これに対し司法省は、同地区で進行中の捜査活動が行われており、管轄権は正当だと反論した。5月12日、オコーナー判事は緊急差し止め命令の申立てを却下し、管轄権が認められる理由を以下のように説明した。

「合衆国法典第18編第3486条(c)項によれば、行政サブポエナの執行は、捜査が行われている米国裁判所の管轄区域内、あるいは被調査者の居住地・事業所・所在地のいずれかで行うことができる。NDTX地区の米国検察局が捜査の実質的な運営と意思決定を主導しており、複数の捜査対象者や潜在的な被疑者が同地区に存在することが記録から明らかだ」

判事はさらに、司法省が提出した機密情報(ex parte)に基づく決定であり、その内容は公開されていないと述べた。このような機密情報に依拠した決定は、連邦控訴裁判所の判例(In re Grand Jury Subpoena事件)でも認められている。

並行するローデアイランド州の動き

テキサスでの法廷闘争と並行して、全く別の動きも進行していた。5月4日、ローデアイランド州の児童擁護団体(非営利団体)が、同州の連邦地裁に緊急申立てを行ったのだ。同団体は、ローデアイランド病院が患者の医療記録を提出しないことが「児童の安全と福祉に対する重大な脅威」であると主張した。

この動きは、性別違和治療を巡る全国的な議論が、医療倫理、法的管轄、州の権限を超えて複雑化していることを浮き彫りにしている。治療薬の安全性や有効性が未確定のまま、医療機関、司法機関、州政府がそれぞれの立場で対立を深めている状況だ。

出典: Reason