拘留者の容体悪化を見過ごした警官に免責を認める
2018年、ミシガン州で拘留中に突然死したジョン・グリスウォルドさん(当時36歳)の遺族が起こした訴訟で、6巡回区控訴裁判所は11月12日、全ての警官に対し「免責特権」を認める判決を下した。免責特権とは、警察官が明確に確立された憲法上の権利を侵害しない限り、連邦民事権利訴訟から保護される法理論を指す。
この判決は、2025年3月にミシガン州東地区連邦地裁のロバート・ホワイト判事が、7人の警官と郡当局に対し免責を否定した判断を覆すものとなった。
拘留者の容体悪化を巡る警官の対応
2018年10月、ブライトン警察はグリスウォルドさんを逮捕した。当時、抗不安薬と抗うつ薬を服用していたグリスウォルドさんは、兄との口論の末に拘束された。兄によると、グリスウォルドさんは少なくとも10錠の不明な薬を服用していたという。その後、拘留中に繰り返し嘔吐し、一晩中同じ体勢で動かないまま死亡した。
逮捕時、グリスウォルドさんは「ろれつが回らない」「立っていられない」と訴え、車内でも「ほとんど歩けない」状態だった。拘留施設到着後、看護師は「瞳孔が針のように小さくなり、汗をかいている」様子を確認し、直ちに病院への搬送を指示した。
病院では、医師が心電図異常(QTc延長)を診断したが、直ちに命に関わる状態ではないと判断。しかし、退院時の指示書には「容体が悪化した場合や嘔吐が再発した場合は直ちに医療措置を要する」と明記された。
控訴裁判所の判断基準と矛盾点
控訴裁判所は、グリスウォルドさんの権利侵害を立証するには、その容体が「治療を要するほど深刻」であるか、あるいは「一般人が見て明らかな医療の必要性」があったと主張する必要があると指摘した。その上で、以下の判例との整合性を欠くと判断した。
- Blackmore v. Kalamazoo County (2004):拘留者の明確な医療ニーズがあったと認められた事例
- Preyor ex rel. Preyor v. City of Ferndale (2007):拘留者の容体悪化が「明らか」であったとされた事例
- Burwell v. City of Lansing (2021):拘留者の死亡につながった警官の怠慢が認められた事例
控訴裁判所は、グリスウォルドさんが「一度嘔吐したのみで、外見上の苦痛の兆候がなく、一晩中わずかな動きしか見せなかった」ため、警官らが「直ちに医療措置を必要とする状態ではない」と判断したと結論付けた。
しかし、警官自身の証言によれば、彼らはグリスウォルドさんの容体悪化を認識していたにもかかわらず、適切な対応を怠っていた。グリスウォルドさんが午後8時に嘔吐した後、警官らは一晩で25回にわたり容体を確認していたが、医療介入を求めることはなかった。
遺族の主張と今後の展望
グリスウォルドさんの遺族は、警官らの「故意の無関心」が死亡につながったと主張していた。地裁は当初、警官らの不適切な訓練が原因であると認め、免責を否定していた。しかし、控訴裁判所はこれを覆し、警官らの行為が憲法違反に該当しないと判断した。
専門家らは、この判決が今後の拘留者の医療ケアに与える影響について懸念を示している。ミシガン州の拘留施設における医療体制の不備が、同様の悲劇を招く可能性があると指摘する声も上がっている。
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