米国最高裁判所は1月23日、資格免除(クオリファイド・イミュニティ)を巡る事件「スミス対スコット」に対し、異例の判決取消差戻(GVR)命令を発令した。

具体的には、スミス対スコット事件の再審査請求を認め、下級審の判決を取り消して合衆国控訴裁判所第9巡回区へ差し戻すと同時に、Zorn対リントン事件(2026年3月23日判決)の判例を踏まえた再審理を命じた。しかし、ソニア・ソトマイヨール判事、エレナ・ケイガン判事、ケイトリン・ジャクソン判事の3人は、再審査請求の却下に反対した。

このGVR命令は極めて珍しいケースとされる。通常、GVRは新判例の成立直後に行われるが、本件ではスミス事件が2025年9月に審議対象に挙がってから長期間宙に浮いた状態が続き、その間にZorn事件(2025年11月審議開始、2026年3月23日判決)が成立。その後、約1カ月を経てGVRが実施された。しかも、3判事が反対した点が特異だ。

なぜ異例の展開に?

GVRとは、下級審の判決を取り消して差し戻す際に、新たな判例や法律の変化を踏まえる手続きを指す。通常は全会一致で行われるが、本件では3判事が再審査請求の却下に反対した。これは極めて稀なケースであり、西法律データベース「Westlaw」で類似事例を調査しても見つからなかったという。

一般的に、判事はGVRに反対する際、再審査請求そのものの却下に賛成するケースが多い。例えば「ローマン・カトリック教区対オールバニ事件」では、GVRに反対した判事が再審査請求の却下に賛成した。しかし、3判事がGVR自体に反対し、再審査請求の却下にも反対したのは異例だ。

背景にある「影の審理」への抗議か

専門家によると、このGVR命令は「影の審理」(shadow docket)と呼ばれる緊急命令手続きに対する静かな抗議の可能性があるという。影の審理は迅速な判断が求められる一方で、十分な議論が行われないと批判されることが多い。3判事は、新判例が成立した後も下級審で適用される機会を与えるべきだと主張したとみられる。

なお、GVR命令自体は事件の決着を意味しない。理論上は再び最高裁に持ち込まれる可能性もあるが、ソトマイヨールら3判事は早期の決着を望んでいたと分析されている。

本件は「最重要ニュース」ではないものの、最高裁の判断プロセスに新たな注目を集める出来事となった。

出典: Reason